先日の土曜日午前・午後に開催されたTEAJセミナーについて書きます。
■午前はTEAJアドバイザージェームズ・ジャッジ先生の『3つの柱【言語・技術・法律】に基づく日英特許翻訳』https://www.teaj.or.jp/seminar/#seminar_1
4月に開講した本特許英語セミナー、『背景技術』から『実施形態』を経て、法律部分である『クレーム(請求項)』に到達。
今回のレクチャーでは、全体を通じて「peripheral claiming(周辺限定主義)」と「central claiming(中心限定主義)」に関連付けながらご教示。
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米国はperipheral claimingなのでクレームがそのまま発明の範囲を定める。
対するcentral claimingでは明細書とクレームを合わせて発明の本質を理解する。
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加えて、米国で審査時に用いられる基準であるBRI(broadest reasonable interpretation)(最も広い合理的解釈)についても解説してくださいました。
これらは日英特許翻訳を行う上でも大変重要なコンセプトです。
知財担当者だけでなく、日英特許翻訳者も知っておきたい考え方です。
特許翻訳は学ぶこと、配慮することが非常に多いので、とても面白い仕事だと思います。
こうした実務に即した内容に加えて、ジャッジ先生の一言一句の英語表現を楽しめるところも本セミナーの魅力的なところです。
英語に不安がある方は、Zoomの字幕機能をオンにして参加いただけると、英語が視覚的にも読めるので安心です。
また、後日録画配信(期間限定)もありますので、録画では、YouTubeの機能を使って再生速度を変えて視聴したり、日本語翻訳を出して視聴したりして復習することが可能です。
さて、私はジャッジ先生の言葉を終始楽しんでいました。
ジャッジ先生の言葉:
I marveled at how much human effort and money goes into claims, and into the words of claims.
「クレーム(請求項)、つまりクレームの文言には人間の多大な労力とお金がつぎ込まれている。」
この言葉でセミナーを開始され、そして終えられました点、とても良かったです。
長いバージョンも登場。
I don’t think there’s anything comparable, in current modern industrialized society, to the amount of human effort and mental effort (which is human effort), and economic investment in claims, in the words of claims.
「特許クレームの文言ほど、人間の労力とお金が費やされているものは現代の産業界においてない。」
そして、セミナー途中のたわいもない一言も気になる。
I shouldn’t dwell too much here.(dwell: 滞在する)
「ここであまり時間を費やしてはいけないのですが」つまり「先に進まなくてはいけないのですが。」
何度かdwellを使われていました。
the business end of patents(特許のビジネスの側面)
「側面」がsideではなくendなのが良い。
イディオム表現the nuts and bolts(基本事項)も登場。
(このイディオムはちょっとハードルが高いかもしれないなあ・・・。)
さて、細部はさておき、今回のジャッジ先生のメッセージは次の通りと理解。
peripheral claimingとcentral claimingという重要な概念を理解すると、いかに「日本のクレーム」と「米国のクレーム」の考え方が異なるかがわかる。そこで、日本のクレームらしくドラフティングされていても、米国クレームとして、きちんと構成要件を定めるのが本来の姿であること。そして翻訳者向けには、米国クレームを訳すにあたり、クレームに書かれている文言が権利範囲のすべてと言えるので、それを肝に銘じてしっかりと翻訳するように、というメッセージのようでした。
ご参加くださいました方、心より感謝しています。
■さて、午後は私自身のセミナー『短文英作で学ぶ科学技術英語』。https://www.teaj.or.jp/seminar/#seminar_4_1
添削を通じて、英文ライティングについて解説させていただきました。
こちらについては、本当に幸せなひとときでした。
ご参加くださいました方々に心より感謝しています。
本当は、私はインスタントなその場での英文添削が好き。
しかし、オンラインは効率が大切であるため、課題を回収して事前準備して解説しています。でも本当は、その場でどんどんブラッシュアップする過去(コロナ前)のセミナースタイルも少し組み合わせたいといつも願っています。
今日は少しだけ行ってみまして、楽しかったです。
ご受講者も楽しんでくださっていると良いのですが。
また今回、課題の提出者が少なかったですので、機械翻訳「DeepL」と「Google翻訳」の訳例もあわせて少し添削しました。
Google翻訳に大きな進歩が見られて非常に興味深かったです。(具体的には、和文2文を英文1文にまとめて訳す、という新規な特徴がみられました。2文目の主語を代名詞ではなく正しく具体化する、という新規な特徴も見られました。)
一方、和文が複文だと英文が単文になりにくいところなど、まだまだ訳出結果の「文構造」が悪かったです。
機械翻訳の進化の過程にも寄り添い、楽しみたいと思います。
ご参加くださった方、ありがとうございました。
本セミナーは第2回目(https://www.teaj.or.jp/seminar/#seminar_4_2)がすでに近づいていて、事前課題をお願いさせていただきました。
まだお申し込みも受付けていますので、ご参加をお待ち申し上げます。
■各種取りそろえていますTEAJセミナー(https://www.teaj.or.jp/seminar/ PDFの一覧はこちら)をご活用いただけると嬉しいです。