ユー・イングリッシュ

ユー・イングリッシュ 中山裕木子 ブログ

本を出版したい方へ


本を出してみたい、と思っている人がいるかもしれません。

 

自分のスペシャルな部分、ユニークな部分についてのあふれる想い、それを他の人の役に立てたい、書き物として残したい、そのような人がいらっしゃるかもしれませんので、手順をここにお知らせします。

 

なぜなら、私ははじめ、本を出したいと思い、あふれる想いがつまった原稿をほぼ書き上げ、それを持って、どうしたらよいのか、分かりませんでした。

 

何かヒントを得たいと願って、先に本を出されている先輩を訪ねました。

一連のお話をしたのちに、「本を出したいのですが・・・」と相談を切り出したものの、手順を教えていただけませんでした。

なんとなく話をそらされるなあ、と思いながら、他の色々なお話をしていました・・・。

 

面談の終わり頃にひと言、「あなたにはまだ早いのではないですか」

 

とても、がっかりしました。

もっと、大きな懐(こころ)を期待していたためです。

 

ですから、私は「本を出すためにどうしたらいいですか?」と尋ねられたら、自分が行った手順をできるだけ詳しくお伝えするようにしています。

また、出版社を紹介してください、とのリクエストにも、単純にその方の企画が通りそうと思った場合には、自分がお世話になった編集社様や出版社をご紹介しています。これまでに、おふたかたをおつなぎしました。

 

良いものが世の中に出れば、皆が助かる。日本が良くなる。

先の書籍は古くなり、新しいものにより、古いものが置き換えられていく。書籍に限らずそれは世の常であり、自然なことです。

古い自分は自分で、時間を経てグレードアップした何かに取り組んでいれば、古い自分(私のことです)は、また新しい今の自分へと変わっていけているはずです。

 

そんなわけで、次の手順が私の出版手順と出版を通して気づいた点です。

一般的かもしれませんが、お伝えをいたします。

 

1. 書く内容を固める、または書いてみる

 

「自分が書くべき内容」「あふれる想い」を「読者にとって役立つ内容」に変えることが必要です。また「世の中にはまだ無いから、自分が欲しいと思う書籍」という視点も大切です。

 

なお、「本を出して楽(ラク)をしたい」「本を出して信頼を得たい」といった発想はおすすめではありません。本を出しても安定した収入は得られませんし、本は査読付き論文よりも著者が独りよがりに書けてしまいますので、信頼性にもばらつきがあるため本=信頼性へと直結はしないように思います。

 

また、「~するために~する」の目的重視の発想はゴールに到達する過程が苦しく、ゴールに到達して一息ついている間の落ち込みも早いです。それよりも「自分は~しなければならないと感じる・~したいから~する」という過程重視の発想のほうが没頭している間に達成でき、その先も自然に次のことに進んでいけるように思っています。

 

2. 企画書を書いて出版社に送る

 

出版企画書を作成し、適宜に選択した出版社に連絡します。出版社のHPに連絡先がある場合が多いです。持ち込み企画用の連絡先がない場合でも、お客様問い合わせ先などでもよいので、出版企画部門へと回してほしい持ち込み企画、として問い合わせます。

 

編集者が興味を持ってくれたら、出版社にて会議にかけられるため、それを待って、決定となります。

 

出版社によっては、会議が月末1回、や企画の種類によっては2ヶ月に1回、などの場合もあるため、タイミングも大切です。企画書を送っても、1ヶ月や2ヶ月、待たなくてはならなくなることがあるためです。専門書の場合には特にタイミングがずれると長く待つことになります。

 

しかし一方で、企画提出のかけもち、つまり複数の出版社に同時に同じ企画書を送ることはおすすめではありません。一社ずつに向き合うほうがよいと思います。それは2つの理由からです。

 

理由1: 単純に、二社の両方からOKをもらうと困る。それぞれ編集者が企画を通されるのには労力と時間がかかる。せっかく通してもらった企画をこちらの都合で一社にお断りをするのは避けたい。

理由2: 自分の企画はいわば「大切な非公開情報」。書籍の編集者様はいつも「面白そうな企画」を探しておられます。不要に企画内容を拡散することで、自分が出版する同時期や直前に同類の書籍が違う著者で出されている、といった可能性がゼロではないかもしれない。

 

企画を出しても連絡が全くなければ、再度問い合わせます。それでもご縁がなければその出版社はあきらめるとよいでしょう。現在出版社が企画中の書籍との関連もありますから、自分がダメだと落ち込むよりも縁が無かったと思ったほうがよいでしょう。

 

企画書の書き方は一般的な書き方がネット検索で多く出てくると思いますが、私は次の点を記載します。

 

自己紹介(著者情報)

書籍が解決したい問題・対象読者

類書との比較(具体的な書名と違い)

目次や章立て(決まっていれば)

総ページ数の予定・色の有無(二色、白黒など)、使用予定の図面の数

価格・本のサイズ

考え得るPR方法(例:大学講義により年間述べXX名に販売または紹介可、教科書採用の可否、その他考え得る方法を具体的に)

 

原稿が完成している場合には、原稿のダイジェスト版を企画書に加えてPDF添付すると、より検討がスムーズな場合があると思います。書籍をこれまでに書いていない場合には、そもそも書籍を書けるのかということが分かるほうがよいため、原稿やブログ記事・講演情報なども参考情報として提示できるかと思います。

 

出版社によって特徴があります。基本的に大手であればいずれも良い出版社ですが、社風や印税の扱い、対象読者が異なります。

 

印税他について:

違いとしては、印税は一般的にXX%という相場がありますが、それより数パーセント低い場合があります。なお、訳書の場合は下がります。

また、刷った冊数分の印税が支払われる場合(例えば1000冊刷った時点で印税が支払われる場合)と、刷った冊数によらず、その年に販売できた冊数分のみの印税が支払われる場合があります。

(また、出版社によっては初年度と増刷時の印税設定が異なる場合もあるようです。)

 

また、電子書籍の有無、またその電子書籍がamazon Kindleか、または出版社独自のものか、についても違いがあります。

 

あとは初回の献本を10冊いただけるところ、5冊のところ、またそれより少ないところ、また増刷時に献本を1冊いただけるところと、増刷時に献本をいただけないところ、があります。

 

また、私は自分の書籍データをPDFで持っていたいのですが、書籍を出すと権利が出版社に移るため、自分の書籍のPDFをいただけない場合があります。

 

出版した書籍を購入したい場合、著者は通常10%割引の価格で自分の書籍を注文できます。送料がかかるところとそうでないところがあります。

 

また、原稿の納期の厳しさの違いや、例えば書名についての著者の意見が通りにくいところ、といった点の違いがあるかと思います。

 

納期は出版社の決算期や本を出すのに不適な時期(8月は暑くて売れないので不適、3月よりも2月が無難、など)の都合によります。

 

書名については、最終決定(承認)する上の人と編集者・著者との風通しがよくない場合があったり、検索にかかるキーワードを入れるよう要請されて書名がおかしくなったり、または多く売れた類書と同類の名称をすすめられる(これは目先の初版の数字だけを見ておられる可能性があるので、必ず断らなければなりません。長く読まれる書籍でないと書く意味が無いです)、といったことがあるように思います(出版社によって異なります)。

 

上記の条件や特徴は色々出版をして分かったことではありますが、実際は、条件的なところは私は最後まで聞きません。確認したい方は各段階で尋ねればよいと思います。

 

意図する読者に届くかどうかという点が重要です。出版社が出している書籍を見て、アプローチする出版社を決めています。読者層を検討してから、出版社を決めます。例えば英語学習者に強いところ、ビジネスパーソンに強いところ、一般読者層が広いところ、または知財などと限られた読者を多く含むところ、などがあるかと思います。

この内容はこの出版社に受けてもらえたら読者にうまく届きそう、と思ったところに企画書を送ります。

 

また、ある程度見込みが出てきたら、出版されている本を見てこの出版社は~が良さそうだけれど、~については、自分が注意して改善しよう、などと決めておきます。

 

例:特許本を出した際の出版社様の場合、書籍内のレイアウトがほぼない、という書籍が多かったことを確認済みでしたので、原稿は自分で枠を作ったり、フォントを変えたりしてレイアウトしました。それをできるだけ忠実に反映してもらいました。レイアウトがほぼない出版社様の場合には、逆に自由にレイアウトさせていただけるので、ありがたかったです。

レイアウトから中身の構成や中身までを色々とご指摘くださる出版社の場合には、それに合わせた内容と原稿が必要になります。

 

  1. 執筆と出版

出版社が決まれば、編集者と打ち合わせをします。通常初回1回の打ち合わせとなります。(私は途中段階でもう一度お会いすることが多いです。原稿がおおかた完成した時点で対面でお願いごとを伝えに行きます。)

 

初回の打ち合わせの際には、希望をしっかりと伝えます。書籍イメージや自分の想いもそこでは伝えて、必ず良い本にする協力関係を構築します。

私は原稿チェックの最後が修羅場になることが見えているので、原稿チェックの段階を多めに取ってもらうように要望しています。

 

原稿を提出(脱稿、といいます)してからの手順には差があります。

ゲラ、という書籍の原稿を組んでいただいたものをチェックしますが、2稿のみのところ、3稿まで見せていただけるところ、また3稿ではあまり修正が許されない場合、などがあります。各稿のチェック期間も1, 2週間から1ヶ月など様々です。

 

ゲラ化する前のワード原稿の段階で、精度を高めておくことが重要です。ゲラになるとページ数などの制約が多く、またPDFは直しにくく、修正による誤記の増加も気になります。

 

ゲラへの修正は手書きで入れることもありますが、私はPDFのコメント機能を使っています。ただコメント機能を使うとつい直しすぎてしまうので、直すことによる新たな誤記や、修正指示不明瞭による修正ミスが多くなります。

 

 

また、個人的には、原稿の校閲者を誰にお願いするかも考えておくべきです。独りよがりな原稿にならないように、できるだけ、各章を編集者以外の誰かに個人的に目を通してもらうほうがよいです。

 

校閲者としては、私は過去に無料校閲を自分がしたことや知人にお願いしたことがありますが、実際には、料金を払って校閲していただくほうが適切であると今は考えています。今は自腹で1~3万・5万・10万(見ていただく分量に応じる)を支払って、信頼している知人に校閲してもらうことがあります。出版前から赤字になりますが、見て下さる方がいる場合にはお願いをするほうがよいです。自分では盲点になっていた指摘をいただけることがあります。

 

書籍出版の最後は私はいつも修羅場になります。編集者とのやりとり、終わりのないチェックとおびただしい誤記や表記の揺れ、諦めることができない細部への追求、このような本にしたいという気持ちの高まり・・・。

編集者様を振り回し、編集者様に支えてもらいながら、修羅場を経て、一冊の本が完成します。

 

 

  1. 出版

ゲラ原稿の手が離れると、あとは待つことしかできません。

ときには早くからamazonに掲載されて焦ることもしばしばでした。I am not ready yet.という感じ。

 

そして発売数日前に書籍のサンプルが送られてくると、そのときの書籍の手触りは、本当に愛おしいものです。

さて、これからよろしくね、私の想いのつまった大切なあなた、という感じ。

 

 

以上は私の出版プロセスです。

 

 

本は、今なお、アイディアを人の役に立てるための重要な媒体であると考えています。

 

さて、皆様のIdeas worth spreading. = あふれる想い、を読者にとっての価値へと変えた書籍のご出版を楽しみにしています。

 

Let’s try!

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特許翻訳文の届け先の一つである米国特許商標庁(USPTO)に想いをはせながら、5年前にホームページを作成しました。

米国特許商標庁の近くにご勤務の知人にお願いをして、写真を撮っていただきました。

 

 

想いは褪せることなく、想いは募るばかりです。

 

特許にも論文にも、明確で簡潔な英語。

 

「あなたの技術」を世界に正しく伝え、技術を守り、発展させる架け橋となりたい。

 

シンプルイングリッシュで、もっと多くの人が幸せになる。

 

そう信じて、ユー・イングリッシュは歩み続けます。

 

 

ユー・イングリッシュが社会に役立つ仕事ができるよう、スタッフともども、精一杯努力していきます。

 

 

 

このたび、トップページのメッセージを新しくしました。

 

 

合わせてユー・イングリッシュスタッフによるTweetsも開始させていただきます。

 

中山ブログ更新の告知や弊社書籍やセミナーのお知らせ、また日々翻訳に取り組むスタッフからのひと言や技術英語にまつわる内容を投稿させていただきたいと思います。

 

どうぞよろしくお願いいたします。

英語の理解を深めるためにも柔軟な頭―講師業より


本日の学生の質問。

 

I could pass the exam.  試験に受かったの?受かってないの?

couldには仮定法の意味があるから、「できた」か「できていない」かが分からない。

 

このことを、理解しているんです。

 

(私:よく勉強していますね~)

 

しかし、先生のTEDトークで、I couldn’t speak English.って言ってましたよね。

あのcouldn’tは、「できなかった」のか「できなかったわけではない」の両方を表してしまう、ということにはならないのでしょうか。

 

(私:5年前のTEDxですか。あー、見ましたか)

 

 

中山解説:

couldには仮定法「できるはずなのに」や「できたはずなのに」の解釈の余地があるのに、なぜcouldn’tにはそんなニュアンスがほぼ残らないのか。

それは、人間が使う「文脈」の問題である、と考えています。

 

「できたはずなのに」

「できるはずなのに(もう少し時間があれば・もう少し頑張れば・私にだって)」

 

これらは、人間生活において、よく生じる状況なのでしょう。

 

 

「できないはずなのに」

「できなかったはずなのに(~であれば)」

 

一方こちらのほうは、そもそも、使う状況が少ない。

 

単に「できなかった」= I couldn’t do it.のほうは、使う状況が遥かに多い。

 

ですからI couldn’t speak English.と言っても、「私は英語が話せないかもしれない」や「話せなかったかもしれない」という意味にはならず、「話せなかった」という単純過去の意味になります。

 

 

couldn’tが仮定法の意味になるのは、とても限られた、例えば次の文脈を思いつきます。

 

 

How are you today?       (調子はどう?)

Couldn’t be better.            (最高だね=これより良くなることなんてないくらいだよ。)

 

 

couldn’tを仮定法の意味で使う文脈は、これくらいかな、と思います。

 

 

そんなことを、学生へ話していたら、学生は「あー、確かに」と納得した様子でした。

 

 

英語は言葉ですから、人が便利に作っている。

人が使う状況を少し考えてみると、色々なことが見えてきます。

 

英語は「勉強すべき教科」ととらえて頭が固くなってしまうと、行き詰まってしまうことがあります。

 

すべての表現が同じように説明できるわけではない。それぞれの単語が異なる意味を表すので、扱いも変わるのです。

 

 

似たような話をもう一つ。

「できない」を表すcannotとcan not。

 

can notは強意、と辞書にあります。

cannot は普通の表現です。

 

人にが「それはできない!」と言わなければいけない状況は多くあるでしょうから、cannotという自然なトーンの表現と、can notでnotを強調する表現の二種に分かれたのでしょう。

 

I cannot take this job.(この仕事、無理です)

I can not take this job.(この仕事、私には絶対無理です)

 

一方、mayの場合にnotを強調する表現は特に無いので、maynot と may notの2つの表現は必要がない。ですからmaynotは存在しないのです。

 

ところがmaybeは存在しています。「may be(~かもね)」という文脈が人の生活において多くあるためです。

canbe(なりえるだろうね)という表現は無いのに。

 

 

そんなことを考えるとき、言葉を理解することは楽しいな、と感じます。

 

 

翻訳文の英語を扱うときも、同様のことをいつも考えています。

 

なぜこの単語はOKなのに、この単語はダメと感じるのか。自分が持つ違和感はどこからくるのか、それらを自分なりに分析しながら、表現を選んでいます。

 

 

気がつくと固くなる頭を意識的に柔らかくして、物事の本質を捉えること。

難しいけれど、仕事をする上で大切と考えています。

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