ユー・イングリッシュ代表取締役 中山 裕木子のブログ


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  日常, 講師 

工業英語ジャーナル・技術英語ジャーナル

日本技術英語協会の季刊誌「技術英語ジャーナル」の執筆を「工業英語ジャーナル」の時代から長く続けてきました。

 

具体的には、2005年の6月号より「技術英語へのアプローチ(文法編)」と題して連載を開始しました(書籍『技術系英文ライティング教本』の前身記事です)。

 

ジャーナルの執筆は、当時、技術英語を広める啓蒙活動の一環として、はじめて私に割り当てられた仕事でした。

 

その後も「日英翻訳スキルアップ(https://www.u-english.co.jp/reading/)」など、様々な連載を行ってきました。

 

連載が変わる合間に1回休もうかと心によぎったことはありましたが、16年間、結局一度も原稿を飛ばすことはありませんでした。

書くことを続けられて幸運でした。

 

さて、最後に担当したのは「特許翻訳」に関する記事でした。

 

特許翻訳を「タイトル」から「背景技術」「図面の簡単な説明」「実施の形態」「特許請求の範囲」へと順に解説し、最後に「サマリー」と「アブストラクト」の解説を終えました。

 

昨今は特許関係の記事も増えていて、私が伝えられることは伝えきったように思われ、切りがよいのでジャーナルへの連載を終了することにしました。

 

特許翻訳への想い、ジャーナルへの想いが、自然に次のような締めくくりの言葉となりました。

 

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以上、「サマリー」と「アブストラクト」の翻訳の留意点を解説した。サマリーとアブストラクトは特許明細書の訳出の工程での最終段階であり、独立クレームの英文を活用しながら適切な形へと仕上げる箇所である。サマリーとアブストラクトを終え、1つの案件のすべての項目を訳出し終えた翻訳者は、発明の要点と、案件が求めている権利範囲を熟知しているだろう。

 

特許翻訳とは、発明のストーリーを理解し、それを一つの文書へと仕上げる長いプロセスである。記載される内容は高度に技術的で専門的であるものの、実際には人間の英知の詰まった発明のストーリーが背後に見え隠れする。翻訳作業中、発明者と出願人に寄り添いながら、共に仕事を成し遂げるというように感じる側面がある。そして特許制度の目的である「発明の保護と利用の機会により産業の発達を促し、産業の発展に寄与する」ことに思いを馳せながら、特許翻訳者は自分の役割を全うする。以上、日英特許翻訳のプロセスを解説した。本連載は、これで終了する。

(技術英語ジャーナル 2021年12月号)

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さて、「捨てる神があれば拾う神がある」?というのはよく言われたもので(捨てられたというわけではないですが)、これで終わりにしようと一区切りつけた丁度そのとき、別の科学雑誌から連絡が入りました。

 

「大学生向けの理系雑誌にて、科学技術英語の記事を書いてもらえないか。」

「ハイ、毎月1ページ、書かせていただきます。」

 

いつもの通り、即答をしました。

「季刊誌(年4回)でも原稿期限に多少苦労していたが、毎月の執筆、大丈夫か?」と弱い心の声が叫ぶ一方で、「大丈夫、楽しみだよ。」ともう一つの自分が声を打ち消す。

 

新しい場所での記事では、新たな気持ちで、少し丁寧に3つのC(正確・明確・簡潔 = シンプルな英語)について語る予定をしています。

この先を異なる読者と歩んで行くのも、きっと良いのだろう。

 

 

新記事の執筆を楽しみにしながら、求められる場所があるとすれば、これからも3つのC(正確・明確・簡潔)の普及活動を続けたいと願っています。

 

さて、「3つのC(シンプルな英語)」の普及活動と特許翻訳、これを軸にしながら、2022年も過ごしていきたいと思います。

 

みなさまどうぞよろしくお願いいたします。