ユー・イングリッシュ代表取締役 中山 裕木子のブログ


I want you to find the beauty of English and love English.

  日常, 翻訳, 英語表現 

仕事の言葉使いとmeanwhile

私が使いこなせない英語にmeanwhileがあります。いつも難しいなと考えていて、リライト時に削除しています。

 

meanwhileの意味は、文頭ではOn the other hand,やHowever, 文中ではat the same timeというのが通例でしょうか。

 

文頭のMeanwhile,を「一方」の英訳として翻訳者が使われることもあるようですが、個人的にはこの表現が苦手です。

 

「難しい」と感じるとともに、本日頭に浮かんだmeanwhileの私の違和感の理由について、ここに記載いたします。

 

日本語の話になりますが、仕事で使ってはいけない日本語として、私自身が過去に指摘された言葉があります。

 

テクニカルライティングのセミナーを依頼くださった企業の重役の方から、注意をされました。

 

とてもありがたい注意でした。

 

「とりあえず」

 

これは、ビジネスの上では絶対に言ってはいけない、とその方がおっしゃいました。

「とりあえず」なんていう仕事は一つもないんだ、とその方はおっしゃいました。

 

その意見に深く共感したので、その後、私は「とりあえず」を書き言葉でも話言葉でも、仕事で使わないようにしています。

 

ではどうすればよいか?

 

「つい言ってしまうときがあればどうしたら・・・?」とさらに相談したところ、「まずは」に変えなさい、とおっしゃいました。

 

「とりあえず」→「まずは」

 

解決策まで出してくださり、本当に素晴らしい方でした。

 

(私はこのように自分にダメ出しをしてくださる方を好む傾向があります。しかも「どうしたら良いか?」までを相談することがあるので、「心が強いね」などと言われることがありました。しかし、ダメ出しをされると、何より「気づき」があります。何がいけないか、どうすれば改善できるかを考える機会になるので、くださるご意見は非常に貴重です。また、ダメ出しをなさる方は、たいてい本物の実力者で、自分には無いスキルをしっかりと持っておられるので、単純に尊敬の念をいだくためでもあります。)

 

その「とりあえず」を少しやわらかく言い換えれば、「さしあたり」となるように思うのです。

 

「とりあえず」のようにタブーではないけれど、なんとなく似た言葉なのが、微妙なニュアンスの「さしあたり」や「当面は」のように思います。

 

 

そして、それに対応する英語が「meanwhile」であるような気がしてならないのです。

 

「とりあえず」ほどは悪くないけれど、「さしあたり」や「当面は」といったニュアンスが伝わる可能性のあるmeanwhile(___whileとあることからも、「当面」といったニュアンスが伺い知れます)。

 

その単語を「一方」という日本語に飛びついて使うのは、あまりよろしくないのではないかと考えています。

 

「一方」には、本当に対比であればIn contrast,(単文の場合)、whereas(複文の場合)という代替案があります。内容が対比でなければ、訳さなければよい。また、対比部分の英語表現をパラレルに揃えることやパラグラフを変えることで「一方」と「他方」をきれいに並べて見せて、英語では「一方」の文言を記載しない、という方法も使えます。

 

そのようなわけで、meanwhileの出番は、ユー・イングリッシュの翻訳スタイルには今のところは存在していません。

 

スタイルの決め方は人それぞれですが、そのようなことを考えながら、本日リライトをしていました。

 

meanwhileのリライト中にふと浮かんだ「とりあえず」の話を懐かしく思いながら、ご指摘くださった方のことに、想いをはせていました。

 

その方は、大企業でご尽力されて、技術者であられながら、知財・法務部で日本語の技術文書の書き方を指導し、英語テクニカルライティングの手法に共感してくださいました。「日本の技術文書の品質改善」という意味で共感してくださり意見交換ができたビジネスパーソンは、これまでにもその方だけでした。何か恩返しができないかなあ、と考えています。

 

さて、この3月はプロジェクトがいくつか終わりました。いつも3月は、1年を見直し、4月からはじまる新たな1年へと準備をします。日々の社内の翻訳状態の整備を終えたら、次のプロジェクトを含め、新しい1年へと走り出すときがきています。