論文の書き方:若手研究者へ というところからの一節:
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Beginning independent investigators are often told that a research reputation can be thought of as a product of quantity times quality of published work.
若手研究者は、出版物の量と質の積で研究が評価されると耳にするかもしれない。
If only one publication appears every 10 years, they may be advised, it had better be a good one. On the other hand, a large number of low-quality publications is not of benefit to the individual or the profession.
10年に一度しか出版物を書くことができないのであれば良質にするほうがよいだろうが、質の低い出版物を数多く出すことは,本人にとっても科学分野にとっても有益であるとはいえない。
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自分で日本語訳を確定しておきながら、意味が取れない。この記載はOn the other handが矛盾しているように思う。いや、英文は誤っていないから、自分の解釈が誤っている。
●had betterのニュアンス
3語英語の説明サイト(「had better」は命令口調。もっと自然に伝えるには?):
https://diamond.jp/articles/-/193586?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor
これを実際に適応して、上の英語を日本語に訳そうとするが、何か上手くいかない。
結局、英語ネイティブにメールで確認しました。
なお、私自身はフリーランス時代10年、そしてその前後の合計およそ15年ほど、ネイティブの意見を一切聞かずに、自分の書き方スタイルを確立しました。
「非ネイティブだからこそできる、シンプル英語による高品質翻訳」などと謳ってきました。
「ネイティブに聞かずにスタイルガイドに聞こう」ともよく言ってきました。
しかし会社を設立してから最近は、「参考」にするために英語ネイティブの方々の意見を聞くことがあります。
意見に振り回されない確固としたスタイルが確立すれば、そこからネイティブ英語話者の意見を少しプラスアルファすることは、より品質を高めるために悪くないと考えています。
「私たちは英訳翻訳者、英語力アップしようプロジェクト」も社内でもやってみたいと考えています。
英語ネイティブの意見が必須ではないと考えつつも、余力があるときは、前進を願って相談を・・・。
さて、今回の質問。
分かっていたことだけれど、had betterは”a threat”とのこと。それをきちんと適用すれば、先の英語は意味がとれるのに、いざ実際の文、しかも書き言葉の文中に普段目にしないhad betterが出てきて理解が甘くなってしまったことを反省しました。
英語ネイティブからのメール:
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Hi Yukiko,
‘You’d better do it! Or else there’ll be trouble.’ is a threat.
‘If you’re only going to publish once every ten years, it needs to be a very good piece of work, or you’re going to lose your job.’
Is that helpful?
Regards,
XX
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訳文を改定します。
意味がとれない訳:
10年に一度しか出版物を書くことができないのであれば良質にするほうがよいだろうが,質の低い出版物を数多く出すことは,本人にとっても科学分野にとっても有益であるとはいえない。
→
検討中の訳:
10年に一度しか出版物を書くことができないのであれば良質にすべきだが,質の低い出版物を数多く出すことも,本人にとっても科学分野にとっても有益であるとはいえない。
もう少し改定中の訳(元の英文に忠実に):
10年に一度しか出版物を書くことができないのであれば良質にすべきという忠告を受けるだろうが,数多く出す場合であっても,質の低い出版物を出すことは,本人にとっても科学分野にとっても無益である。
最後に調整した、ややあっさりした訳:
10年に一度しか出版物を書くことができないのであれば良質にすべきだが,数多く出す場合であっても,質の低い出版物を出すことは,本人にとっても科学分野にとっても有益ではない。
さらに、サラッと言い換えてくれたネイティブによる英語も、書き留めたのでここに残しておきます:
If only one publication appears every 10 years, they may be advised, it had better be a good one. On the other hand, a large number of low-quality publications is not of benefit to the individual or the profession.
→言い換え
Producing only a few very high quality publications is risky; however, producing many low quality publications is also not beneficial.
「こういうこと」と言い換えるのがネイティブはやはり上手いですね・・・。
パラレリズムも綺麗・・・。
そして今回の英語の発見:
had betterは、実質的にはhave toと理解すると良い、と思いました。(誰でも知っていること、かな? ですが、自分の中で腑に落ちると、とても楽になります。)
一つ、英語の理解が深まりました。
(先の3語本の執筆中、説明しようと思って考えているうちに話言葉でshallはshouldであること、そしてshallをshouldに変えるとShall we have a break now?→Should we have a break now?と、友人同士の「~しちゃう?(Shall we…?)」からビジネスに適した「~しましょうか。(Should we…?)」へと変わることを発見して自分の中で腑に落ちたことがありました。今回はそれに似たような機会でした。)