ユー・イングリッシュ代表取締役 中山 裕木子のブログ


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辞書とのつきあい方を発見

今さらながら、気付いたこと、そう、辞書は私たちを、助けてくれるもの。

 

辞書とのつきあい方について、「そうだ!」と思ったことがあります。

当たり前のことですが、しかし、重要な発見のようにも思えたため、そのことについて、書きます。

 

「辞書が無い状態で、ものを書いてはいけない」(工業英検の本にも書かれていること)

 

「辞書は友達、仲良くなろう」(私が学生たちに言ってきたこと)

 

などと、辞書について、これまでも思うことはあったものの、イマイチ、腑に落ちていないことがありました。

 

しかし、今回はっきり分かったこと。

 

  • 辞書の誤解

→辞書は、その単語の意味を知るためのもの×

 

  • 辞書の現実

→辞書は、意味は分かるのだけれど、翻訳対象言語での良い言葉が見つからないときに、より良い言葉がないかどうかを探すもの○

 

ということです。

 

このことに、和訳をしていて(普段は英訳ばかりで、あまり和訳をしません)、分かりました。

 

和訳をしていると、例えば「attribution」、この英単語の意味は分かるのだけれど、イマイチぴったりの日本語が見つからない。

 

また、「context」、この単語の意味は分かるけれど、しかし、日本語を迷ってしまい、良い言葉が決められない。

 

そんなとき、「分かっているけれど、念のため辞書を引いてみるか」、と思って、英和辞書を引きます。

 

→すると、驚くほど多くのバリエーションで、「しっくり」くる日本語が、たくさん、出てくるではありませんか。

 

つまり、翻訳をする単語について、分かっているけれど、しっくりくる言葉を探したい、という状況では、辞書が大変役に立つことが分かりました。

 

 

具体的には、英和辞書を引いて、元の英語も、出てくる日本語も、どちらも意味が分かっている状態で、単語を選ぶのです。

 

和訳だから、このカラクリが、理解しやすい。

 

決して「帰属」っていう日本語はどういう意味だろう?

 

分からないけれど、英和辞書に「帰属」って書いてあるから、attributionを「帰属」と訳しておこう、という選択ではないのです。

 

また、「帰属」って辞書には書いてあるけれど、この文脈では、「誰に所属しているか」っていうように、かみ砕いて日本語に訳そうか、などと、自身の判断も反映させます。

 

また、例えば、context(文脈)が訳しづらかったのですけれど、context = 「文脈」は、今回の内容では「背景」と訳そう。また別の内容では「位置付け」と訳そう。

このように、context = 「文脈」から広げて、適切な単語をその文の内容に照らして、自分で作ったりもしながら、決めました。

 

 

翻訳とは、こういう作業であること、当たり前のことなのですが、今回和訳を通じて、なんとなく、「辞書はこのように使うのか!」「私たちを、助けてくれる!」というように、再度、実感しました。

 

さて、ここでの私の発見、つまり思ったことは、これをそのまま、英→和(和訳)ではなく和→英(英訳)に置きかえてみることです。

 

日本語の意味は分かるけれど、いまいちしっくりとくる良い英単語が見つからない、そんなときに、和英辞書を引くのです。

 

そのとき、和英辞書に出てきた一連の英単語、それらは、当てすっぽで選ぶわけではなく、また、それらの意味が分からないまま選ぶわけではなく、また、辞書の中から必ず選ばなければならないわけでもないのです。

 

そう、出てきた単語を手がかりにして、もし自分で「表したい意味にぴったり!」と思えば選べばよいし、そうでなければ使わなければ良い。または、もっとかみ砕いた簡単な別の英語へと連想して、新たな単語を使っても、良いのです。

 

先ほどのcontextを「文脈」ではなく「背景」と訳したり、また「位置付け」と訳したりしたのと同じことを、和→英のときも、臨機応変に、言葉を広げて行えば良いのです。

 

 

そう、辞書が本当に役に立つのは、「辞書に書かれている単語を意味をすべて把握してから」なのかもしれません。

 

私は理系学生へのライティング授業では、出来るだけ辞書を引かないようにしましょう、と言いますが、そのことが正しかったように、感じました。

 

初め学生達は、「???」という顔をします。

「辞書を引きましょう、単語を覚えましょう」とそれまで言われ続けてきた、と言うのです。

辞書を引かないで、なんて、聞いたことがない、と言うのです。

 

なお、学生たちは日英両方の論文を読んでいますから、いざ自分が書くとき、辞書を引かなくても、専門用語は知っていることが多いです。

 

それなら、辞書を引かず、自分の頭の中の単語を、探して欲しいのです。

 

また、もし辞書を引いたとしても、決して知らない単語、不安のある単語には飛びつかず、「見たことがある」「知っている」「使いこなせる」という単語だけを使って欲しいのです。

 

私自信もこの方法で、ライティングを進めてきました。

 

自分自身は、その結果、いまだに使いこなせない単語が沢山あります。

 

例えばimpinge(衝突させる)。

 

ノズルジェットの話などで、液体ジェットを対象物に「衝突させる」なんていう文脈では、いい加減に使わなければならないかな、と思いながらも、いまだに使っていません。

 

なんとかimpingeが理解できてきたから、そろそろ使おうか、と思った瞬間、他人の誤用(自動詞と他動詞の誤用)を発見してしまったりして、その都度、「私たち非ネイティブには未だ早い!」などと思い直し、結局、hit(衝突する)などの簡単な単語を工面して、最終原稿からはimpingeが消えてしまいます。

 

 

この方法は、私の個人的な方法です。

しかし、今のところ、この方法がユー・イングリッシュでは上手く機能しています。

 

そんなことを思いながら、本日は和訳を通じて、「辞書はやっぱり友達」「私たちを助けてくれる」。そしてそれは、「辞書の単語をすべて知っているとき」、ということを、確信したのです。

 

また、「辞書の単語をすべて知っている」ようになるのは、それほど長い道のりではないと思います。

 

知らない単語には手を出さず、知っている単語だけを少しずつ使っていく。

自分に必要な単語は、仕事を通じてよく目にしますから、無理をして覚えなくても、少しずつ、知らない単語→見たことある単語→そろそろ使えそうな単語、へと変化します。

そしてそれを続けていれば、いつのまにか、「各分野の単語をおおよそ知っている」というようになるのが、工業英語の単語数だと思います。

(TOEICの単語、つまり一般英語の単語には、終わりがありません。しかし、工業英語の単語には、限りがあります。)

 

 

和訳を通して実感、「ありがとう、辞書!」