大学院で授業をしていますと、修士2年生は、就職活動が大変そうなことがあります。
例年、スーツで頑張る学生さんを、見守ってきました。
数年前、だんだん、つらくなってくる、ある学生さんがいました。
徐々に笑顔が消えました。
焦りが見えていました。
授業には来てくれていましたが、随分、つらそうでした。
私は、心で「頑張れー」と、エールを送っていました。
その当時、私はあまり、学生さんに、話しかけませんでした。
でも、授業の中で、就職活動が忙しい時に「息抜き」に英語に来てくださいね、という声は、かけつづけてきました。
実際、「息抜き」になるような授業内容も、当時工夫をして、用意していました。
さてさて、本年度の学生さんも、就職活動で、休みがち。
先日「どうですか?」と軽く声をかけると、
「心が折れそうです」
うーん、若者よ、悲しいことを言う。私は心が痛いです。
「あなたは素晴らしい」「若くて研究しているあなたは、十分に、素晴らしい」「高いポテンシャルがある」「明るい未来がある」
だから「心、折れないでー」
就職面接って言うのは、たった15分や30分やそこらで、「自分」というものを分かってもらうように、アピールしなくてはいけない。
とっても良い学生さんであっても、時に、それが伝わらなかったり、違うように伝わってしまったり、することがあるのでしょうね。
かくいう私も、面接や人前で何かをすることが大の苦手でしたので、そのような状況が、よくよく、分かります。
面接官様、理解して、一押し学生ですよー、お願いよー。・・・と、研究指導されている先生方も、祈るような気持ちで、学生さん達を、送り出しているのでしょうね。
さてさて、「若者達よ、心、折れないで。」
お節介講師である私は、自分が思うところの「どうすれば良いか」「どんなテクニックが役に立ちそうか」「会社重役の面接官に勝つ(?)ために」「短時間の面接でアピールして、バリバリ働き会社へ貢献する姿を見せるためのコツ」、を英語の授業の時間に、延々と伝え続けたのですけれど・・・。
暑くるしくて、うるさい講師でしょうね。
英語の授業中にこんな雑談をしていたら、大学側にも、怒られそうですね。
また、授業終了後も、もう一度5分も余分にそのことに時間をもらいましたから、さらに、怒られそうです。
私がただ一つ、伝えたかったこと。
ただ一つ、言えること。
「若者よ、大丈夫、大丈夫ですよ。」
(万が一面接がダメだったとしても、単にご縁がなかっただけ。あなたの魅力を見誤った担当者が悪いのです。)
自分でコツコツと努力していれば、そして将来に希望を持って歩んでいれば、そう、必ず、道は開ける。
大丈夫、大丈夫・・・。
心折れないで、若いあなたは、絶対、大丈夫。
*****
みんな、希望がたくさんあるよー。
未来は明るいよー。
大丈夫ですよー。
*****
そんなことを、英語の授業という媒体を通じて、自分よりも若い人たちに、伝えていけるといいな、と思っています。
ですから今は、できるだけ、学生さんには声をかけたいな、と思っています。
米国ヒューストンに事務所を置かれるNakanishi IP Associates, LLCの中西康一郎先生との共催セミナーのお知らせです。
中西康一郎先生には数年前にはじめてお会いし、米国実務の現場からの有益なお話に、私自身は魅了されました。お仕事をご一緒できるといいなと思っていましたところ、昨年、ご縁が舞い込みました。
さて、『米国特許セミナー』は、9月に名古屋で開催予定です。
演題:強い米国特許を取得するために-米国における権利化実務の重要ポイント-
第1部: 中西康一郎(日本弁理士/米国パテントエージェント)
第2部: 中山裕木子(翻訳者)
開催場所: 愛知県名古屋市 名古屋駅近辺(会場未定)
日時: 平成27年9月10日(木)
セミナー 18:00~20:00
懇親会 20:00~(1時間半程度)
セミナー・懇親会共に、無料となっています。特許実務に携わられている方々、米国での実務に関する疑問・質問をお持ちの方々、また翻訳者の方々など、多くの方にご参加をいただきたいです。私、中山も1時間をいただいていまして、「出願人の真意が伝わる英文明細書に仕上げるための英文ポイント」をお伝えしてまいります。
お申し込みの詳細は、Nakanishi IP Associates, LLC社のホームページをご参照ください。
http://www.nipa-pat.net/#!about-1/c1zpo
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演題:
強い米国特許を取得するために-米国における権利化実務の重要ポイント-
【第1部】 日米間における特許実務の違いを知ることの重要性
【第2部】 英文特許明細書のチェックポイント
演者:
第1部: 中西康一郎(日本弁理士/米国パテントエージェント)
第2部: 中山裕木子(翻訳者)
セミナーの内容(要旨):
【第1部】(1時間)
日本の弁理士として、また、米国パテントエージェントとして、日米両国において長年に亘り特許出願及び中間処理手続きに従事してきた演者が、近年の判例動向や自身の実務経験に基づき、米国特有の実務における勘所をお話し致します。特に、構成要素の明確化が重要な米国の特許実務と、日本の実務との違いについて、米国特許法101条要件(保護対象たる発明の適格性)の考え方や、112条要件の考え方を例にとりながら、ソフトウエア、電子機器、制御関連発明の取り扱いを中心に、考察してゆきます。米国特許出願や中間処理に際し、米国特許法101条や112条違反の出願拒絶や権利無効を回避する上で重要と思われる実務上の留意点を説明します。また、日米間における発明の捉え方の相違、米国実務における勘所、米国代理人との上手な付き合い方といった観点から米国において強い特許を効率的に取得するための重要ポイントを説明します。
【第2部】(1時間)
審査官にとって読みやすい特許明細書、出願人が意図する権利範囲を明確に表現する特許明細書に仕上げるための英文のチェックポイントをお伝えします。特許翻訳者の立場から、不要なオフィスアクションを減らし、円滑な審査を助ける英文のあり方を模索します。
参加費:セミナー、懇親会共に無料
主催:Nakanishi IP Associates, LLC/株式会社ユーイングリッシュ(共催)
特許翻訳はいつも修行・・・。
なぜかどうしても訳せない、上手く表現できない、という言葉に出会うことが、いつまでたってもあります。
そのように感じてしまった時は、少し俯瞰的な目で、「なぜ訳せないのか」の原因を探ります。
ある案件で、どうしても位置関係が上手く表せないものがありました。
ただその位置について描写すればよいのであれば、英語で表現することはどんな場合も可能だと思うのですが、そこに原稿の「日本語」が存在するため、時に難しくなることがあります。
この「日本語」を書いた人はどのように考えて、この位置を定義しているのか、を考えます。
例えば「Aの位置」を基準にして「Bの位置」を定義しているのだけれど、どうしても、訳せない。
なぜ訳せないのか・・・。
分かった、「Aの位置」を基準にしていることに少し無理があって、本来その文脈では「Cの位置」を基準にして「Bの位置」を定義するのが自然だから、訳せない、ということに気づきました。
「なぜ訳せないか」を冷静に判断すると、色々なことが見えてくることがあります。
さてその少しの矛盾(和文での情報や論理の飛び)に気づいた後、ではどうすればよいか。
「Cの位置を基準にして書いてもよいですか?」
・・・という提案は、明細書作成者ではない私たち翻訳者には、なかなか、言えないことなのです。
和文に使われている「Aの位置」をなんとか英文に登場させつつ、「Cの位置」を大きく登場させることなく、それでも英語でもなんとか「読める」ように、英文を仕上げる。
時に、おそらく、「もういいや、和文にこう書いてあるから。位置関係が伝わらないかもしれないけれど、和文に書いてあるんだから、いいや。図面もあるし。」、と、さじを投げ出したくなる誘惑が、迫ってくるのでしょう。
そこで、今日も、思い起こしたこと。
何のために、この文書を、提出するのか。
そう、適切な権利化を目指すため。
特許翻訳者は、お客様である和文作成者のその先に、さらに「審査官」が、見えていなくては、いけない。
「ダメだ」「ダメだ」、英文は、最終的に、「伝わる」ものでないと、いけない。
和文を大切にしながら、それをなんとしてでも、英語として「伝わる」ものに、しなくてはならない。
和文を改変することなく、「Aの位置」を英文表現にしっかりと残しながら、でもまるで「Cの位置」から定義した時と同じように、「Bの位置」が一読して分かるように、なおかつ英語として自然なように、定義する。
今回の対処法は、次の通り。
さらによく考えると、和文作成者の頭の中にも「位置C」が存在するようでした。
「位置C」を頭の中の前提においた上で、Aの位置を「補足」として登場させている、ということが、和文の随所から、分かりました。
なぜ「位置C」が書いていないかというと、「位置C」のことが別の文脈で直前で出てきているので、省略されたものと思われます。
対処法は、次の通り。
「位置C」は直前に別途出ているので、位置Cを英文に登場させることは、英訳の範囲内と考え、位置Cを英文にも登場させました。その上で、位置Aを使って位置Bを説明する、また、説明の単語も、当初考えていた表現とは変えて、位置Cとの関係で説明が上手くいくものを、選びました。
その上で、位置Cを登場させたことを、翻訳注に簡単に書いておきました。
うん、「読める」表現になった。
折衷案ではありますが、和文からの英訳の範囲内に収めた上で、「読める」「分かる」表現になった。
なお、お客さんによっては、また案件によっては、「和文からの変更」を結構許容くださる場合もあるのですが、それでも、それをご提案する場合のお客さんにとっての時間のやりとり、つまりお客さん側の確認のための時間コストを考えると、和文の範囲内にいつもおさめることは、大変重要と考えています。
さてさて、本題に戻り、「まあ、いいか。和文に書いてあるし。伝わりにくくても、仕方ないか。」、という誘惑に翻訳者自身が打ち勝つためには、特許翻訳を行う上での「目的意識(=英語が審査を妨げず、余計なOA(拒絶)の原因にならず、審査官がきちんと審査できる英文に仕上げること)」を持つことが、役に立つと、再確認しました。