ユー・イングリッシュの特許翻訳では、チェックとリライトを、結構な数の段階を踏んで、行います。
拙著『外国出願のための特許翻訳英文作成教本』p332-333に「日英翻訳に必要な工程」について書きました。
「実務でもこの工程すべて踏んでいる?」、と読者に尋ねられることがありました。
もちろんです。この工程に追加することはあれ、いずれかを削除したことは、ありません。
「過剰品質では?」などと尋ねられたこともあり、驚きました。
過剰と思ったことは、これまでに一度もありません。
そのご質問者によると、「クレームが大切なのに、他の部分、例えば「従来技術」などまで、このような工程を踏む必要は無いのでは?」というご指摘でした。
私の考えとしては、「大切なクレーム英訳」に成功するためには、翻訳者自身の技術と発明の理解が必須となり、そのためには、翻訳者自身の理解のためにも、他の部分も丁寧に訳出&チェックをする必要がある、と思っています。
さて、スピード英訳、じっくりリライト(早期に英訳を終え、リライトの段階をじっくり何段階も取る)により、チェック&リライトを行い、精度を高めていきます。
少し視点が変わりますが、今日は、最終段階の微調整、に着目。
私自身は、明細書リライトの最終段階で、「各構成要素の名前」の微調整、を行います。
例えば、unitでもsectionでもpart, portionなどいずれも大差ないように見える単語に関しても、「何が何に属していて」「何が大きい概念で何が小さい概念」、といったことが、一読して分かるように、単語の微調整を行います。
●また例えば、日本語「本体」は本当にbodyで良いのか?
main bodyのmainは不要でしょうが、body、に関しても、文脈によっては、bodyでないほうが分かりやすい場合もあると思っています。
●block, section, circuit, _or, _er表現・・・
どれが一番分かりやすいかな。
●また例えば、「配線」にしても、wire, wiring, conductive trace, 単にtrace, またはconductive line, lead・・・・。
訳す時、色々なことを考慮してベストと思われる訳語を選択してはいるのですが、最後に必ず、「全体像が見えやすいように」、そして「一読して、内容が頭に描きやすいように」、微調整を行います。
●「要素の名前」自体も、一度見直します。
例えば「XX導入部」はXX introduction unitで良い?
introductionでも間違っていないけれど、よりその要素の役割・機能に近づけた英訳が、和文「導入」が表す意味の範囲内で、可能ではないか?
→変更。
(今回は、結構大胆に、変更しました。漢字を使った和文は意味が広いですから、「導入」からしっかり和文の範囲に収まる表現で、英語では一目で意味が分かる表現に、変更しました)
これらにより、審査官が内容を理解するのにイライラしない、読むのをあきらめてしまわない英語の文章に仕上げるよう、最終微調整を行っています。
最後に完成した英文明細書を紙に印刷して、図面片手に、真っ白な頭で、読む。
「一読して理解出来た。よし、納品!」
作成した英文明細書が、お客様、そして出願人が意図した仕事を果たしてくれますように、と願って・・・。