ユー・イングリッシュTwitterでは、『英語論文ライティング教本』を紹介をしてきました。ご紹介もそろそろ終盤です。
先日、この書籍に関する嬉しい出来事がありましたので、ブログを書きます。
まずはこの書籍の執筆背景です。
過去に京都大学で10年間、授業を担当した時期があります。
理系の大学院生、M1からドクターまでが対象の論文英語のライティングの選択科目。
はじめ派遣講師として出向して担当していました。
のちに、非常勤講師になる手続きを京大の先生が進めてくださいました。
「頭の切れる」学生たちとともに、とても密度の濃い時間を過ごしていました。
アンケ―トで「大学で受けた授業の中で一番勉強になった」と複数名に書いてもらったときは、目を疑いました。
おそらく学生たちには、がっちりと研究歴のある学者の先生方の授業に囲まれる中、私のような外部講師による授業が逆に新鮮にうつったかな、などと思っていました。
自分が大学生の頃、専任ではない非常勤の先生が、仕事の合間を縫ってビジネスの現場からやってきてスピード感のある授業をされたのが印象的だったので、自分も自然に「時間効率」を授業の中で目指しました。それが功を奏したのかもしれません。
大学講義では、1つの授業90分、または15回程度の講座全体を、イメージとしてはサーカスのショーの進行役のように組み立てることを目指していました。出し物はシンプルなテクニカルライティングの世界です。
手を変え品を変え、聴衆を飽きさせずに没頭させる、ということを目指していました。
スピード感に最もついてきてくれたのは、京大生でした。
「早口で進行が早いけど、もっと早くても別に良い」と言ってくれたのも、京大生でした。
そんな京大での授業は、大学改革という名のもと、私の担当がなくなりました。
例年のように4月から担当すると予定していたところ、工学部が英語専任講師を雇うことに変更したので、非常勤の雇用はありません、と。
突然のことで、かなりheart-brokenでした。
他大学の担当コマ数が増えて同日の大学掛け持ちが増えていたので、仕事としてはそれでよいのですが、しかし、京大生には、もう、会えない・・・。
その年には同時に名古屋大学の授業も、同じ改革とのことで該当科目が廃止となり、非常勤の担当が終了しました。
名大のはじまりは、数回の単発の講座担当のあと、テクニカルライティングを気に入ってくださった名大の先生が非常勤講師へとお手続きくださったことでした。数年担当したのち、科目廃止のため終了しました。
そんなことで拍車がかかり、私の10年の授業を急いで書籍にしました。
「想い」があふれました。
どうか、学びたい人が、これからもテクニカルライティングを学べますように。
そして、どうか理系学生にテクニカルライティングを教える英語の先生が日本の各大学に増えますように。
一般英語ではなくテクニカルライティングを教える英語の先生が増えますように。
そんな想いで書いた書籍が『英語論文ライティング教本』。
執筆途中、京大生へのheart-brokenで涙しながら原稿を書いた部分もあるくらい、実は、想いの詰まった書籍なんです。
日々難しい研究に取り組んでおられる理系の方々にとって、英語が難しいものであるはずがない。
方向性さえ正しくして学習を行えば、必ず、短期間で自身の研究を英語で正しく書く力を自分で身につけられるはず。
そのような自分の考えと、そして研究者である理系学生への尊敬の念、10年間の想いを詰め込んで書いた書籍でした。
そんな書籍は分厚くなりすぎて、文字も小さく、内容を詰め込みすぎた、と反省していました。
これを最後まで読める人はいるのか・・・?自分でも、読み通すのが危ういくらい。
実際に、「文字が小さく分厚くて読み切れなかった」、というお声を聞くことがありました。
執筆を終えたものの、誰かが読んでくれているのだろうか。
そうしましたら、先日、見知らぬ研究者の方が書評を書いてくださったお知らせが届きました。
ここに掲載させていただきます(雪氷82(2)-2020より引用)。
読んでくださる方が、いるんだ。
とても嬉しい気持ちになりました。
京大生にも、いつか届くといいな。
さらには、誰か英語の先生が私の教科書を使って、京大生などに教えてくれないかな。
そんなわがままな願いを持ちながら、今日は久しぶりに自分の「英語論文ライティング教本」で感じていた理系研究者への想いや尊敬の念を思い出していました。
さて、そろそろWebでの大学授業もはじまります。
理系卵の皆さんに適切な英語力をつけていただける授業をお届けできるよう、初心に戻って頑張ります。
目下の興味は、Web授業で学生に飽きずに90分または拡張の105分集中してもらうにはどうすれば良いか。
在宅の受講生の元気が出たり意欲がわくような授業、かつ効果的で効率的に学んでもらえる授業の形があるか、模索します。
新しい形の授業の機会をいただけるのはありがたいこと。
Every cloud has a silver lining. ・・・厳しい情勢ではあるけれど、今できることを精一杯に頑張りたいと思います。