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第8回:【前置詞にまつわる疑問や問題―4. 「AのB」は“B of A”“A of B” “A B”“A’s B”のいずれを使うか】

前置詞ofの基本イメージ

 はじめに、前置詞ofの基本のイメージを確認しておきます。前置詞ofは、辞書を引くと、「~からの分離」が元の意味、と書かれています。そこで、前置詞ofが表す関係は、「分離されているけれど、変化はしていないこと」と考えることができます。
 例えば、前置詞ofを次のようにイメージ化することができるでしょう。

     前置詞of:分離されているけれど、変化していない

 前置詞ofの意味は「分離」から広がりを見せ、「所属」や「所有」などの広範囲な関係を表します。

「AのB」に使う“B of A”が表す様々な関係

 「AのB」を表すには、通常、前置詞ofを使って、“B of A”と書くのが、最も丁寧で、基本的な書き方です。そこで、“B of A”が表す関係を、『技術英語の前置詞活用辞典』(原田豊太郎著)に記載の例文と解説を参考にして、次のようにまとめてみました。

<“B of A”が表す関係>
(a) AがBであること
例:the absence (= B) of signals (= A)(信号が無いこと、信号の欠如)

(b) AをBすること
例:the use (= B) of carbon fibers (= A)(炭素繊維を使うこと、炭素繊維の使用)

(c) 所有や所属(Bに属性や特性、Aにモノ)
例:the source region (= B) of the NMOS transistor (= A)(NMOSトランジスタのソース領域)、the strengths (= B) of samples (= A)(試料の強度)

(d) AというB(Bの具体的な説明がAにくる)
例:a pressure (= B) of 50 MPa (= A)(50メガパスカルの圧力)、danger of cracking(割れの危険性)

(e) AについてのB、Aに関連するB
例:the results (= B) of these experiments (= A)(実験の結果)、anisotropy data (= B) of CoCr films (= A)(CoCr膜に関する異方性のデータ)、ten years (= B) of experience (= A)(10年間の経験*)*注:ten years of experienceは日本語では「10年間の経験」、つまり「BのA」

(f) AのなかのB
例:one (= B) of the advantages (= A)(利点の1つ)、the most electronegative (= B) of all the elements (= A)(あらゆる元素の中で最も電気的に陰性なもの)

(g) Aの状態のB
例:the model (B) of this type (= A)(この型のモデル*)
* 注:このofは、次の英文中のofの使い方と同じ
This characteristic is of importance. (この特徴は重要である)(文法補足説明:of importance = important)

 以上のように、「分離されているけれど、変化はしていない」、から前置詞ofの意味は広がりを見せ、“B of A”により、様々な関係を表すことができます。

“B of A”と“A of B”を混乱しがちな例

 前置詞ofを使って「AのB」を表す際、上で説明したように、通常は“B of A”と書くことができます。ところが、日本語の表現によっては、まれに“A of B”となるような場合があり、そのことが、混乱の原因になっているようです。
 次に、“B of A”と“A of B”を混乱しがちな例を3つ挙げます。

例1:「10年間の経験」
     ten years of experience ○
     experience of ten years ×

解説:上で説明したように、「10年間の経験」は、「(e) AについてのB、Aに関連するB」として、ten years of experienceと書きます。experience of ten yearsとは通常書きません。「経験に関する10年」、つまり「経験というまとまりから10年を分離した」、と考えることができます。「分離」を元の意味とする前置詞ofの、ごく自然な使い方です。

例2:「この型のモデル」
     the model of this type ○
     this type of model ○

解説:上で説明したように、「この型のモデル」は、「(g) Aの状態のB」として、the model of this typeと書くことができます。一方で、英語のAとBとを逆にして、this type of modelとも書くことができるのです。this type of modelのほうは、上の分類では、「(c)所有や所属」に入れることができるでしょう。
 これら2つの表現は、伝えるニュアンスが異なるだけであって、いずれも正しい表現です。the model of this typeでは、modelに重きが置かれます。this type of modelでは、typeに重きが置かれます。またちなみに、typeに重きを置いた後者の表現では、modelが抽象化し、type ofの後にくる名詞modelの冠詞は、脱落することになります。

例3:「1リットルの水」
     a liter of water ○
     water of a liter ×

解説:この例でも、日本語と英語を対応させると、「AのB」が“B of A”ではなく“A of B”となっています。「1リットルの水」は、water of a literとは通常書きません。「水というまとまりから分離した1リットル」と考え、a liter of waterと書きます。日本語では「水の1リットル」ではなく「1リットルの水」と表現しますので、「A のB」が“B of A”ではなく“A of B”となってしまうわけです。

 ここに挙げた混乱しがちな例では、日本語と英語の表現のずれにより、「AのB」が“B of A”ではなく“A of B”となってしまうわけですが、これらの表現においても、前置詞ofは、「~から分離してきた~」「~に所属している~」「~から変化していない~」という基本を、忠実に表しています。したがって、大切なことは、いずれにしても、前置詞ofの基本(= 分離)に忠実に、表現することです。

「AのB」は“B of A” “A B” “A’s B”?

 次に、「AのB」を前置詞ofを使って“B of A”と書く代わりに、“A B”のように名詞を羅列する方法や、“A’s B”のようにアポストロフィとエスを使って書くことについて、それぞれの利点や欠点を検討します。

 例えば「製品のコスト」と書く場合、次の3通りの表現が考えられますが、これらの表現に意味の違いはあるのでしょうか。また、どの表現を使うのが好ましいでしょうか。

「製品のコスト(AのB)」
     (1) the cost of the product “B of A”
     (2) the product cost “A B”
     (3) the product’s cost “A’s B”

 (1)は正式表現です。(1)を使っておけば、どのような文脈でも、不適切になることはないと思われます。欠点としては、「長くなってしまうこと」「名詞costとproductの両方の冠詞について判断しなければならないこと」が挙げられます。冠詞について、特に、ofの後に冠詞をつけるのを忘れてしまう、といった間違いが多く見られることがあります。

 一方、(2)の表現は、名詞を羅列することにより、名詞を形容詞化(product=製品の)する、略式な表現です。名詞を単純に羅列することにより、無用な誤りをなくして簡潔に書けるという利点があります。2つの名詞productとcostをひとまとまりに考えますので、冠詞の判断も、1回で済みます。ただ、羅列する名詞の数が少ない場合にしか使えません。羅列可能な名詞の数は、通常3つまで、最大でも4つくらいです。

 (3)では、「’s(アポストロフィとエス)」により、「所有」を表しています。先の(2)ではproductとcostの結びつきが比較的弱いのに対して、(3)は、「costはproductのもの」、という強い結びつきを表します。ただし、本来「所有」とは、「人による所有(例えばdriver’s seatなど)」を表すものです。「モノ + ’s」の表現を技術英文で多用することは、好ましくありません。またさらに、「’(アポストロフィ)」が存在することで、読み手の視線が一瞬そこで止まりますので、英文全体の読みやすさが損なわれることも挙げられます。

 結論として、技術英文では、「AのB」が短い句であれば、(2)の表現<“A B”>を使い、長い句であれば、(1)の表現<“B of A”>を使うようにするとよいでしょう。(3)の表現<“A’s B”>は、Aが「人」の場合(例えばdriver、userなど)には、使ってもよいでしょう。
 以下に、いくつかの表現例を示します。読みやすさに応じて、適切なものを選択するとよいでしょう。

 「製品のコスト」
 the product cost   ◎
 the cost of the product  ○

 「キャスタ角の調整」
caster angle adjustment ○
 adjustment of the caster angle ◎

 「NMOSトランジスタのソース領域」
 the NMOS transistor source region △(羅列する名詞が多くて読みづらい)
 the source region of the NMOS transistor ◎

 「蒸気発生器の設計の過程」
 the steam generator design process ○
 (羅列する名詞数は通常3つくらいが限度ですが、なんとか読めるのでOK)
 the design process of the steam generator ○
 the process of designing the steam generator ◎
 the process of the design of the steam generator △(解体しすぎても読みづらい)

 「蒸気発生器の制御回路の設計の過程」
 the steam generator control circuit design process ×(読みづらい)
 the design process of the steam generator control circuit △(やや読みづらい)
 the process of designing the control circuit for the steam generator ◎

正確・明確に書くために―ややこしいと感じる表現は徹底的に調べて理解する

 ややこしいと感じる前置詞表現などがあった場合、その前置詞表現の元となる基本の意味は何か、またどんな文脈でどのように使われるかを、徹底的に調べることが大切です。完全に理解できるまで調べ、時には英語マニアになることで、ややこしい前置詞表現であっても、理由付けをしながら正しく使えるようになります。表現を深く知ることで、英文を正確・明確に書くことができます。

【前置詞にまつわる疑問や問題―4. 「AのB」は“B of A” “A of B” “A B” “A’s B”のいずれを使うか】のPOINT

  • 疑問を持ったら深く調べ、時には英語マニアになる。一つ一つ理由付けをして表現を選択することが、スキルアップにつながる。
  • 「AのB」は、基本的に“B of A”を使えばよい。日本語の言い回しによっては“A of B”のように逆になる場合がまれにあるが、いずれにしても、前置詞ofの基本(= 分離)に忠実に表現する。
  • 「AのB」を表す“B of A”, “A B”, “A’s B”を比較すると、
     - “B of A”は正式表現で好ましい。長い句などにはこの表現を。BとAの名詞は、それぞれきちんと冠詞の判断が必要。
     - “A B”は名詞の羅列による略式表現。羅列する名詞が少ない場合に使用可能。冠詞の判断が“B of A”に比べて少なくて済むので
      誤りが起こりにくくて便利。
     - “A’ s B”はAがBを「所有している」ことを表す。Aの名詞は「人」であることが好ましいため、使用できる状況は限られる。

<参考文献>
原田豊太郎『例文詳解 技術英語の前置詞活用入門』,日刊工業新聞社,1999年

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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