ユー・イングリッシュ

ユー・イングリッシュ 中山裕木子 ブログ

次世代の学生


大学院総合理工学研究科で実践科学技術英語ⅠⅡⅢⅣという授業を担当しています。

そろそろ、前期授業も終わりに近づいています。

実践科学技術英語Ⅰでは、修士1年生を対象に、英語の基礎の基礎から学びます。

今期は、短文の暗記テストと文法強化、工業英検3級練習、短文英語ライティングからパラグラフライティング、また各種リスニングと、色々と、がんばっていただきました。

 

このクラスの私の目標は、「とにかく彼らを寝させないこと」(笑)。

 

毎日 実験とアルバイトに追われている彼らは、目を離すと(?)、すぐに寝てしまうのです(笑)。

 

うん、今期は彼らを寝させないことに、比較的、成功していたと思います。

 

さて、最終プレゼンの時期がやってきました。

自分の研究や好きな技術について、希望者に3~5分間の英語プレゼンテーションをしていただきます。

 

このコース、2006年に開始しましたが、当時は「プレゼン大会」が成り立たない状態でした。

 

プレゼンができない、がんばって前に出ても、話せなくて黙りこんでしまう、質疑応答も、できない・・・。

講師が助けても、プレゼン大会が、成り立たない・・・。

 

当時愕然とした私は、指導が悪いことに気づき、順を追って、少しずつ、彼らをプレゼンへと誘導するよう、指導を試みました。

 

随分、思考錯誤しました。

上手く学生をその気にさせること。上手く誘導して、自然に練習を重ねてもらい、色々な側面からアプローチし、そしていつのまにか、プレゼンが少しでも、できるようになるように。

 

さて、今日は、ある学生のプレゼンに、私は感動しました。

十分に練習を重ねた、流暢な英語。

チャレンジ精神。

自信を持ったプレゼンタとしての、魅力ある態度。

 

ああ、あなた、ここまで、できるようになったのね。

 

一人でも二人でも、このクラスからこんな生徒が出てくることは、8年前には想像もできなかったことです。

 

嬉しいなあ。

 

最近の若い人たち、吸収が早くて、すばらしいです。

そして彼らの英語力、全体的に、確実に、上がってきていると思います。

色々なメディアのおかげで世界が一つになりつつある今、日本の英語力について、それほど懸念する必要はないのかもしれません。

心配しなくても、当たり前のように英語を使いこなす若い世代が、現れるのかもしれません。

 

私はテクニカルライティングの指導を通じて、そんな彼らの背中を押していきたいと思っています。

 

 

根拠を探して②


私の次の転換期は、大手企業(XX社)の知的財産部への特許英語講座でした。工業英語協会で私が講師を務めた英文ライティング基礎セミナーに来てくださったその企業の方が、社内での特許英語の講座を企画くださったのです。

個人へのご依頼をご希望ということで、お打ち合わせから、すべて一人で行いました。講座の対象者は、XX社の知的財産部の方々60名程度、とのことでした。

 

「よく一人でXX社に立ち向かうね」、と知人は言いました。

 

私の考えとしては、「目の前に来た仕事は拒まない」こと。スケジュール的に可能でさえあれば、即答でよい返事をして、お引き受けします。難しい仕事には、返事をしてから、大いに、悩みます(笑)。

「できない仕事は自分のところにこない」、と信じて、即答したら、あとは最大限の努力をして、なんとか形を作っていきます。自分に負荷をかけることで、力がでることがあります。(“Push yourself. Physically, mentally, you’ve gotta push, push, push.” David Gallo)

 

さて、この講座、はじめは明細書の英語全般(特許英語)が中心だったのでよかったのですが、その年の5回コースを終えたのち、次は「クレーム編」と「明細書編」に分けて実施しよう、と中身が深まりました。「クレーム編」、となってくると、大勢の知的財産部のクレーム作成実務経験者を前にして、「一翻訳者」である私は、一体、何を話せばよいのでしょう。

 

そのようなこともあり、根拠を探して、「武装」をしはじめたのです。

 

毎日毎日、MPEP(米国特許審査便覧)を読み込みました。そして、関連する判例を、徹底的に読みました。さらに、Faber on Mechanics of Patent Claim Draftingという良書に出合い、実務の上での答えも、どんどん見えてきました。

 

これまでぼんやりと思っていたこと、表現を迷っていたことに、理由付けができるようになりました。

実務と理論がつながり、これまでバラバラだった知識が、一つにまとまって、理解できるようになりました。また文字通り、英語と特許が融合し、本当の意味で、「特許英語」というものが理解できるようになりました。

 

この頃から、翻訳者であっても、英語だけでなく、そしてもちろん技術だけでなく、特許の法律や特許の実務も学ぶべきだ、と考えるようになりました。

 

根拠を見つけながら、納得しながら仕事をすることは、とても楽しいことですから。

 

XX社さま、2年間にわたる特許英語講座のご依頼、本当に、ありがとうございました。またいつか、お仕事でご一緒できる機会があればよいと願うばかりです。

根拠を探して


今から10年前、公益社団法人日本工業英語協会の専任講師になりました。きっかけは、工業英検1級の首位合格による文部科学大臣奨励賞 受賞。受賞後に声をかけていただいて、協会で1, 2回、講義をしました。その後、専任講師へのお声がかかりました。

 

それから間もなく、京都大学大学院の工学部で教える機会に恵まれました。以来9年間、一度も休むことなく、技術英語ライティングコース(実践的科学技術演習)を京都大学で担当させていただいています。

 

当時の私の感想は、「え、いきなり京都大学?」「しかも大学院?」

 

確かにハイランク大学、それはそれは、頭のよい、素晴らしい学生さんばかりです。

 

でも教え始めて気づいたことは、ハイランク大学であっても、英語を書いてきた経験が、極少ない、ということです。

実務で大量に英文を書いてきた私個人の経験は、知識に申し分のないハイランクの学生さんにとっても、お伝えできること十分に多くがある、ということは、嬉しい発見でした。

 

さて、この試練(?)を乗り越えるために、武装しはじめたのが、「根拠を探す」ことでした。「経験」だけではいけない、「経験則」を裏付ける「理論」「根拠」が必要だ、とそんな風に思ったのです。

 

そのことは、すぐに功を奏し始めました。京大生は、「理論」が大好きだったのです。

 

冠詞ひとつにしても、

「~という理由で、このように特定できるため、ここは定冠詞です。」

「ここの名詞の単複は、書き手が決めましょう。このように表したいなら単数無冠詞、このように表したいなら複数形、そしてこのように表すと、こんな意味になります。」

「そしてその根拠は、○○です。」

「~です。なぜなら~、だからです。」

 

徹底的に、理詰めで、技術英語を説明をしました。根拠としたのは、主に、スタイルガイド、テクニカルライティングの洋書、英英辞書、です。講師の英文ライティングの経験則を全面に出さずに、「理由付け」を組み合わせました。

 

また、徹底的に避けた言葉は、

「どっちでもよいと思います。」

「なんとなく○○と思います。」「感覚的には・・・です。」

さらには

「私の経験によると○○です。」

 

「言語」という、一見理由付けしづらいものに対して、徹底的に、理由付けを行いました。

なお、実際は、「言語」は人が作ったものです。言葉ができた背景などを考えると、不思議と、色々な英語表現を簡単に理由付けることができました。

 

「覚えておこう」「そういうものだ」

ではなく、

「~という理由で~です」

「~を表したいなら、~です」

「書き手が、自信を持って、決めてください」

と伝えることで、代表的な表現に縛られず、英語って自由なんだ、ということを伝えたかったのです。

 

仮にどちらでも良い表現があったとしても、本当にどちらでも良いのではなく、微妙なニュアンスの違いまでを理解した上で、自分の意図に近い方を選択するべきだと思うのです。

 

このような指導を心がけたのち、京大生の反応が、みるみるうちに、変わり始めました。   真剣な眼差しで、納得しながら、英語を学ぶ姿が見られました。

 

京大生は、頭がいいんです。京大生に限らず、理工系の学生は、本当に、頭がいい、頭が切れる。そんな彼らが、「英語ができない」とか、「英語が苦手」、というはずがないのです。

 

問題は、英語を教える側にあります。英語が「雲をつかむ」ようにぼんやり、ふんわりとした世界だったから、彼らは英語嫌いになってしまったのではないでしょうか。

 

そんな彼らにもう一度、英語を面白いと思っていただけるよう、そしてさらには英語を自由に使いこなし、自分の技術を堂々と世界に発信していけるよう、そして英語を少しでも好きになっていただけるよう、私はこれからも、最大限の努力をしていきたいと思います。

 

講師をはじめて10年経った今、1回の講義でも、次のようなお声をいただけるようになりました。感謝。

 

●私がもう一度英語も好きになる方法もあるかも知れないという自信が出てきました(O大学 教授)

●私の英語に、一筋の光明を見いだせたような気がしています。(F高等専門学校 教授)



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