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第6回【前置詞にまつわる疑問や問題―2. 日本語と逐一対応しない前置詞】

「~の~」にofが使えない場合もある

 前置詞の選択に迷うことが多い、という方から、次のような質問を受けました。

質問:
「境界線の2点」は、two points of the boundaryでよいですか?
<参考図> ―●―――●―       ―― ・・・ 境界線 ●・・・ 点

 前置詞をうまく使えば、「関係」を明確に読み手にイメージさせることができるはずです。ところが、「~の~」をofで直訳したこの表現では、two pointsとthe boundaryとの関係を明確に表すことができていません。前回の【前置詞にまつわる疑問や問題―1. 「~の」を表すofとfor】で触れたように、前置詞ofは、「「所属」や「所有」などの広範囲にわたる関係」を表します。表す関係が広いために、two points of the boundaryでは、two pointsとthe boundaryの関係がぼんやりと表されてしまい、two pointsがboundaryの両端に位置する2点なのか、boundaryの上にある点なのか、どこにある2点なのか、読み手に明確に伝えることができなくなってしまっています。
 そこで、この質問には、次のように回答しました。

回答:
 two points of the boundaryは不明瞭です。ofは「~の~」を表す時に使える便利な前置詞である一方で、表す関係が広いため、不明瞭となってしまうことがあります。より明確に関係を表す適切な前置詞が他にある場合は、そちらを選択することをおすすめします。この文脈の場合、接触を表す前置詞on を使って書くことができます。
「境界線の2点」= two points of the boundary ×
「境界線の2点」= two points on the boundary ○

 この例では、ofではなくonを使うことで、「境界線に接した2点」、つまり「境界線上に位置する任意の2点」について読み手に明快にイメージさせることができます。

便利な一方で表す関係が広い前置詞of

 前置詞ofではなく別の前置詞を選択することで、より明確に関係を表すことができる別の例をみてみましょう。

 例えば、「コンデンサの電流」と「コンデンサの電圧」を、「~の~」を表す前置詞ofを使って、次のように書いてみます。

the current of the capacitor(コンデンサの電流) △
the voltage of the capacitor(コンデンサの電圧) △

 これでも広義には間違いではないはずですが、実際は、あまり使われない表現です。「currentとcapacitor」と「voltageとcapacitor」の関係を、より具体的に表す別の表現は無いのでしょうか。

 正しくは、別の前置詞を使って、次のように表現することができます。

the current through the capacitor(コンデンサの電流) ○
the voltage across the capacitor(コンデンサの電圧) ○

 この場合、前置詞ofを使った場合と比較して、currentとvoltageのいずれについても、capacitorとの関係を、より明確に読み手にイメージさせることができます。つまり、the current through the capacitorでは、「電流がコンデンサを通って流れていく様子」が、読み手の頭の中にありありと浮かび上がることでしょう。そして、the voltage across the capacitorでは、「コンデンサの両端(端と端)の電位差である電圧」が、読み手の頭の中に明快にイメージされることでしょう。このように、前置詞をうまく使うことで、関係を読み手に明確に伝えることができるのです。

日本語に惑わされない―例1:「画像の位置」はposition ofかposition onか

 次に、日本語との対応がややこしい別の例をあげます。
 例えば、「画像の位置」という場合、「画像」と「位置」の関係を表すためにどの前置詞を使うのがよいでしょうか。position of an imageとposition on an imageの2つの表現が考えられると思います。この2つの異なる表現は、どちらを使ってもよいわけではなく、それぞれ次のように、表す内容が異なります。

position of an image = 画像自体の位置
position on an image = 画像中の位置

 前回の【前置詞にまつわる疑問や問題―1. 「~の」を表すofとfor】でも触れたように、前置詞ofは基本的に「イコール」を表します。したがって、position of an imageの場合、「画像=(イコール)位置」ということになり、「画像自体の位置」を表すことになります。一方、「画像自体の位置」ではなく「画像中の位置」を表したければ、position of an imageではなく、position on an image(画像上の位置)と書く必要があるのです。日本語に対応させて適当に直訳するのではなく、表したい内容に応じて、前置詞を選択する必要があります。

日本語に惑わされない―例2:「画像上のエッジ領域」はan edge area on an imageでよいか

 次に、日本語との対応がさらにややこしくなってしまう別の例をあげます。
 例えば、「画像上の」という日本語に対して、「~の上」を表す前置詞onがどんな場合でも使える、と思われがちです。しかし、文脈によっては、onを使うのが好ましくない場合もあります。  例えば、次の場合、onを使うのは好ましくありません。正しくは、ofを使うことができます。

「画像上のエッジ領域」= an edge area on an image ×
「画像上のエッジ領域」= an edge area of an image ○

 「画像上のエッジ領域」の「上」にonを使うと、「画像の上に、エッジ領域が別途存在する」ことになってしまいます。実際は、「エッジ領域」とは、画像内の輪郭(線)の部分を指しますので、「エッジ領域」=「画像の一部の領域」を指します。つまり、「接触」を表すonではなく、「イコール」を表すofを使うのが、正しい表現となるわけです。

正確・明確に書くために―日英を逐一対応させずにその都度適切な前置詞を探す

 日本語と英語は逐一ぴったりと対応するものではないことを念頭に置き、文脈に応じて、その都度適切な前置詞を選ぶことで、正確・明確に書くことができます。前置詞は、上手く使うことで、「関係」を明快に読み手の頭の中にイメージさせることができます。前置詞が上手く使いこなせた時、英語を書くことが格段楽しくなっていると思います。

【前置詞にまつわる疑問や問題―2. 日本語と逐一対応しない前置詞】のPOINT

  • 日本語にとらわれず、英語として正しく「関係」を伝える前置詞を選択することが大切。たった一語で関係を明快に読み手にイメージさせることができる前置詞の素晴らしさを知り、前置詞を効果的に使う努力をすることが、スキルアップにつながる。
  • ofは表す関係が比較的広い前置詞。便利な一方で、より明確に関係を表す別の前置詞がある場合は、そちらを選択。
  • 「~の~」や「~の上」といった日本語に惑わされないで、文脈をしっかりと検討した上で、英語として自然で適切な表現となるように前置詞を選ぶ。「~の~」が常にofとは限らない。「~の上」が常にonとは限らない。

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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