ユー・イングリッシュ

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根拠を探して


今から10年前、公益社団法人日本工業英語協会の専任講師になりました。きっかけは、工業英検1級の首位合格による文部科学大臣奨励賞 受賞。受賞後に声をかけていただいて、協会で1, 2回、講義をしました。その後、専任講師へのお声がかかりました。

 

それから間もなく、京都大学大学院の工学部で教える機会に恵まれました。以来9年間、一度も休むことなく、技術英語ライティングコース(実践的科学技術演習)を京都大学で担当させていただいています。

 

当時の私の感想は、「え、いきなり京都大学?」「しかも大学院?」

 

確かにハイランク大学、それはそれは、頭のよい、素晴らしい学生さんばかりです。

 

でも教え始めて気づいたことは、ハイランク大学であっても、英語を書いてきた経験が、極少ない、ということです。

実務で大量に英文を書いてきた私個人の経験は、知識に申し分のないハイランクの学生さんにとっても、お伝えできること十分に多くがある、ということは、嬉しい発見でした。

 

さて、この試練(?)を乗り越えるために、武装しはじめたのが、「根拠を探す」ことでした。「経験」だけではいけない、「経験則」を裏付ける「理論」「根拠」が必要だ、とそんな風に思ったのです。

 

そのことは、すぐに功を奏し始めました。京大生は、「理論」が大好きだったのです。

 

冠詞ひとつにしても、

「~という理由で、このように特定できるため、ここは定冠詞です。」

「ここの名詞の単複は、書き手が決めましょう。このように表したいなら単数無冠詞、このように表したいなら複数形、そしてこのように表すと、こんな意味になります。」

「そしてその根拠は、○○です。」

「~です。なぜなら~、だからです。」

 

徹底的に、理詰めで、技術英語を説明をしました。根拠としたのは、主に、スタイルガイド、テクニカルライティングの洋書、英英辞書、です。講師の英文ライティングの経験則を全面に出さずに、「理由付け」を組み合わせました。

 

また、徹底的に避けた言葉は、

「どっちでもよいと思います。」

「なんとなく○○と思います。」「感覚的には・・・です。」

さらには

「私の経験によると○○です。」

 

「言語」という、一見理由付けしづらいものに対して、徹底的に、理由付けを行いました。

なお、実際は、「言語」は人が作ったものです。言葉ができた背景などを考えると、不思議と、色々な英語表現を簡単に理由付けることができました。

 

「覚えておこう」「そういうものだ」

ではなく、

「~という理由で~です」

「~を表したいなら、~です」

「書き手が、自信を持って、決めてください」

と伝えることで、代表的な表現に縛られず、英語って自由なんだ、ということを伝えたかったのです。

 

仮にどちらでも良い表現があったとしても、本当にどちらでも良いのではなく、微妙なニュアンスの違いまでを理解した上で、自分の意図に近い方を選択するべきだと思うのです。

 

このような指導を心がけたのち、京大生の反応が、みるみるうちに、変わり始めました。   真剣な眼差しで、納得しながら、英語を学ぶ姿が見られました。

 

京大生は、頭がいいんです。京大生に限らず、理工系の学生は、本当に、頭がいい、頭が切れる。そんな彼らが、「英語ができない」とか、「英語が苦手」、というはずがないのです。

 

問題は、英語を教える側にあります。英語が「雲をつかむ」ようにぼんやり、ふんわりとした世界だったから、彼らは英語嫌いになってしまったのではないでしょうか。

 

そんな彼らにもう一度、英語を面白いと思っていただけるよう、そしてさらには英語を自由に使いこなし、自分の技術を堂々と世界に発信していけるよう、そして英語を少しでも好きになっていただけるよう、私はこれからも、最大限の努力をしていきたいと思います。

 

講師をはじめて10年経った今、1回の講義でも、次のようなお声をいただけるようになりました。感謝。

 

●私がもう一度英語も好きになる方法もあるかも知れないという自信が出てきました(O大学 教授)

●私の英語に、一筋の光明を見いだせたような気がしています。(F高等専門学校 教授)

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