さて、拙著の出版が近づいてきました。
特許翻訳の英語は、こんなに変わった英語でよいのか、法律の制約があるとはいえ、こんなに読みづらくてよいのか、と思いながら、10数年前にはじめた特許翻訳の仕事。
「特許英語は特殊なもの」、とある人は言いました。
「特殊」だから、理解しづらい英語でよい?
確かに、権利範囲を定義する請求項(クレーム)では、1ピリオドで、長い長い文章を記載しなければならない。でも、それを除けば、特許英語も、普通の自然に読める英語として書けないものか・・・、書くべきではないのか・・・、と考えてきました。
私自身が、2001年に工業英検1級試験で受けた質問は、次の通り。(なお、一受験者の立場から、振り返ります。そのような質問がなされる、という意味ではありませんし、模範解答があるわけでもありません。)
「あなた、特許翻訳してるの。特許翻訳は1ピリオドでクレームを記載するから、特殊ですね。そんな特許クレームにも、3Cは適応可能ですか。」
・・・、と、こんな感じの、質問でした。
私の即答:
「はい、どんな文書にも、3Cは適応可能です。特許クレームは確かに1ピリオドで長く書きますが、コロンとセミコロンと改行を使って、分かりやすく構成する手法があります。ですから、1つのセミコロンの部分をまるで1文のように捉えて、その中で、例えば「1文に1つの情報」「能動態」「SVO」などの、3Cテクニックを実現すればよいのです。」
こんなことを即答したところ、合格をいただきました。(これが模範、というわけではありません。一受験者として、振り返っています。)
そしてその後も、3C(正確・明確・簡潔)の手法が、特許翻訳でも使えることを確信しながら、特許翻訳の業務に、邁進していました。
いつしか、思うようになりました。
「3C(正確・明確・簡潔)を使って、特許翻訳の現状を変えることができないか・・・。」
「3Cを提案することが、他の翻訳者にとっても、役に立つのではないか・・・。」
「3Cテクニックを使って訳すことで、特許出願後に出されるオフィスアクション(拒絶通知)を減らすことは、できないだろうか。」
そんな折、お客さんから、とても嬉しい言葉をいただきました。
「拒絶を一度も受けることなく特許査定が下りた年間の案件中で、大半があなたの翻訳によるものでした」
恐れ多いことですが、3Cテクニックを使えば、お客様の益になるのではないか、翻訳者の独りよがりな満足を目的とした3Cではなく、本当にお客様の益になる3Cの生かし方があるのではないか・・・。
3Cと特許英語の融合について、本気で考えるようになりました。
そんなことで、3Cをテーマにした特許翻訳の書籍を書きたい、と思いました。
時間がかかりましたが、多くの方々に支えていただき、このたび、書籍を完成することが出来ました。
心より、感謝しています。
これからの私ですが、内容に関する色々なご指摘や、お叱りも含めて、すべて、引き受けていくつもりです。色々なご意見やご指摘にも耳を傾け、勉強して、進化したい、そして何とか実力を大幅レベルアップして、新たなステージで、特許翻訳業界の役に立つ仕事をしていくことを目指すつもりです。
そんな想いで、今、拙著を世の中に送り出す次第です。
外国出願のための
特許翻訳
英文作成教本
どうぞよろしくお願いいたします。