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ユー・イングリッシュ 中山裕木子 ブログ

さて、大阪セミナー【Application Drafting and Translation Strategies for U.S. Filing of Japanese Applications】(米国出願のための特許明細書の起草と翻訳のコツ)が終了いたしました。

総勢46名の方にお申し込みいただきまして、なんとか無事に、終えることができました。

 

ご参加いただきました皆様に、心より、感謝申し上げます。

selected

 

 

さて、本日はセミナー報告ではなく、ご質問があった点の、備忘録(+some thoughts)を記載させていただきます。

ご質問者にメールをさせていただこうかと思いましたが、ここに、共有させていただきます。

 

●アブストラクトのお話のところで、「アブストラクトは150ワードを少しでも超えてはいけないか」についての質問がありました。

 

この質問、色々なところで、聞かれます。

 

なお、MPEP(米国特許審査便覧)の改訂(2013年)のあと、文言が「preferably not exceeding 150 words」に変わったので、150ワードの規則は緩和されたのではないか、というご意見も聞くことがあります。

 

また、「何ワード超えると指摘されるか」を調べられた、というある方によると、166ワードまで、大丈夫だった(指摘が来なかった)そうです(!)

 

さて、話は戻り、150ワードを1ワードでも超えたら、指摘をされるのか・・・。

また、MPEPの改訂後、150ワードを多少超えても、良くなったのか・・・。

 

 

このことについて、私は、次のように、考えてきました。

 

私の印象(または予想)なのですが、MPEPの改定の前後にかかわらず、前から、「150ワード」は決まりではあったけれど、厳格ではなかったのではないか、と思っています。

 

個人的に2013年よりも以前のセミナーで使っていた資料を見返してみると、次のようなMPEPからの記載を、載せていました。

 

●2012年の中山セミナーより:(MPEP改訂前)

37 CFR 1.72 Title and abstract.
(b) A brief abstract of the technical disclosure in the specification must commence on a separate sheet, preferably following the claims, under the heading “Abstract” or “Abstract of the Disclosure.” The sheet or sheets presenting the abstract may not include other parts of the application or other material. The abstract in an application filed under 35 U.S.C. 111 may not exceed 150 words in length. …

 

*ここでの記載は、may not exceed 150 words in length…です。

 

may not…と書いてありますが、例えば強い禁止を表すshall not…などではありません。

 

そして、続いて読んでいくと、次の記載があります。
C. Language and Format
The abstract should be in narrative form and generally limited to a single paragraph within the range of 50 to 150 words. The abstract should not exceed 15 lines of text. Abstracts exceeding 15 lines of text should be checked to see that it does not exceed 150 words in length since the space provided for the abstract on the computer tape by the printer is limited. If the abstract cannot be placed on the computer tape because of its excessive length, the application will be returned to the examiner for preparation of a shorter abstract.

 

*つまり、

Abstracts exceeding 15 lines of text should be checked to see that it does not exceed 150 words in length since the space provided for the abstract on the computer tape by the printer is limited.

 

「15行を上回ったら、150ワードを上回っていないかチェックされる」

という記載が当時ありました。

 

 

さて、改訂後の、現在のMPEPの記載です。

 

608.01(b)    Abstract of the Disclosure [R-07.2015]

37 C.F.R. 1.72   Title and abstract.

*****
(b) A brief abstract of the technical disclosure in the specification must commence on a separate sheet, preferably following the claims, under the heading “Abstract” or “Abstract of the Disclosure.” The sheet or sheets presenting the abstract may not include other parts of the application or other material. The abstract must be as concise as the disclosure permits, preferably not exceeding 150 words in length. The purpose of the abstract is to enable the Office and the public generally to determine quickly from a cursory inspection the nature and gist of the technical disclosure.

 

* preferably not exceeding 150 words in lengthへと、記載が変わっています。

 

私個人の考えとしては、may not exceed→preferably not exceedingに変わったからといって、大きな差は生じないのでは、というようにも、考えてきました。以前から「15行を超えたらチェック・・・」という記載を目にしていたためです。

あくまで個人的な意見ですが。

 

また、現在のMPEPの表記は、PCTの表記に似せたのかもしれない、とも個人的には、考えてきました。

 

●次の記載は、PCTです。

Regulations under the PCT

Rule 8  The Abstract

(b)  The abstract shall be as concise as the disclosure permits (preferably 50 to 150 words if it is in English or when translated into English).

 

*preferably 50 to 150 wordsという記載があります。

 

***

なお、翻訳業務としましては、150ワードを超えないように、表現を工夫して、訳します。そして万が一超えた場合には、お客様に翻訳注でご報告します。

 

***

さて、ここで、先の現在のMPEPを読み進めると、15 lines(15行)の記載も、微妙に、変わっています。

C.    Language and Format

The abstract should be in narrative form and generally limited to a single paragraph preferably within the range of 50 to 150 words in length. The abstract should not exceed 15 lines of text. Abstracts exceeding 15 lines of text or 150 words should be checked to see that they are as concise as the disclosure permits. The form and legal phraseology often used in patent claims, such as “means” and “said,” should be avoided. The abstract should sufficiently describe the disclosure to assist readers in deciding whether there is a need for consulting the full patent text for details.

 

*つまり、

Abstracts exceeding 15 lines of text or 150 words should be checked to see that they are as concise as the disclosure permits.

 

「15行または150ワードを超えると、(開示が許す限りにおいて)十分に簡潔になっているかをチェックされる」、というのです。

 

何か興味深い、記載です。

 

以前のMPEPは、「15行を超えると、150ワードを超えているかチェックされる」、そして今は、「15行または150ワードを超えると、記載の都合が許す状況において(というような意味に取れます)簡潔になっているかをチェックされる」というのです。ここは結構、変わっています。

 

これを全体として考えると、やはり以前よりも改訂後のMPEPの決まりにおいて、150ワードの決まりというのは、緩和された、というように考えるのが良いのかもしれません。

しかし、150ワードを一語でも超えてはいけなかったのが、改訂されたpreferablyになってから超えても良くなった、というのとも、少し、違うようにも思います。

 

しかしいずれにしましても、MPEPの改定において、AIAのための改定という主な点は良いとして、こうして、細かな文言が様々に変わっているところに、どのような意味を見出せば良いのかなあ・・・と、当時、思っていました。

 

当時丁度、書籍「外国出願のための特許翻訳英文作成教本」の最終チェックをしていた時に、MPEPが改定されたので、随分、原稿の修正をしました。

 

あのとき、書籍のために旧MPEPと新MPEPを読み比べていましたが、例えば機能表現のmeans forの箇所の記載が微妙に改定されていること(means for→meansになっていて、forが取れていることに気付いたり、またbe configured toなどについての記載が追加されていたり)を知った時は、何かとても、ワクワク、したものです。

何度も見比べて、それが意味することを、一人、考えてみたり・・・(答えは出ないのですけれど)

 

しかし、AIAにしてもそうなのかもしれませんが、どこかのauthorityが「ここがこのように変わったのは、こういうことを意図しているので、これからはこうなるよ」とすべてにおいて明示してくれたら分かりやすいのに、Nobody knows what will happen.な状態で、微妙な変化がprosecutionやinfringementに与える影響が徐々に出てくるまで、ただひたすら、待っている・・・。そして、その新しい法律文言が与える影響を徐々に判断をして、仕事のやり方を決めていく・・・。

Nobody knows what will happen….

 

素人の目からすると、何かとても、不思議なことです・・・。

 

さて、備忘録は終わりです。

 

大阪セミナーにご参加くださった皆様、お会いできて、良かったです。

時間を共有してくださって、誠にありがとうございました。私にとっては、皆様との特別な時間になりました。

皆様にとって、少しでも実りある時間であったことを、心より願っています。

 

また改めて、セミナーのご報告をさせていただきます。

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