8月2日の大阪開催の弊社第1回目の技術英語基礎セミナー、無事終えることができましたことに、心より感謝しています。ありがとうございました。
さて、大阪開催第1回セミナーでは名詞や動詞を中心に、基礎から少しの応用までを、扱いました。「名詞と動詞」、というようにその回のテーマは決めつつも、私のセミナーでは、ご受講者の英文やご意見によって、色々なところに、話を飛ばしたいと思っています。
今回は、少しビジネス寄りな例文の中で、複数のご受講者が使われたmake efforts to…という表現ついて、We are making efforts to do…とWe are making efforts in…ing.の違いについて、少し触れることがありました。その中で、to不定詞の「未来指向」について、お話をしました。
その続きで、最後に少し触れた一般的な文章での例示について、急ぎばやに説明を終えてしまいましたので、ここに、補足をしておきます。
「その時分かったけれど、もう一度説明したほしい」というご受講者からのお声をいただいたためです。
■「to不定詞は未来を表現するもの」
そのようなto不定詞の性質から、中学時代に学校でとりあげられがちな、次の表現の英文法の「裏側」について触れました。
I stopped smoking.
I stopped to smoke.
中学校でのありがちな説明:
●中学の先生
stop smokingとstop to smokeで意味が変わるから、注意しないといけないですよ~
なんとなんと、stop smokingは「禁煙する」、を表すのに、stop to smokeは、「タバコを吸うために立ち止まる」をあらわすんです!
●生徒
ほぉ~!!!
●先生
得意げな顔
●その後の生徒
・・・で、どっちがどっちだっだっけ?
なんか、ややこしいなあ、もう、別にどっちでもいいか・・・。
この種の文法事項を、きちんと理由付けて説明してくれる先生がいればよかったな、と思います。そういうわけで、今回の大阪セミナーで、to不定詞の未来指向の説明時に、身近なこの例文を出しました。
以下、大阪セミナーでの説明を振り返ります。
「~するのをやめる」という文脈で、stopに対してto…ingを使うと、そのような意味になりにくい、ということを説明しました。
I stopped to smoke.
この表現ですと、「タバコを吸うのをやめる」、という解釈にならず、stopには「やめ
る」と「立ち止まる」の両方の意味がありますので、stopped to smokeで、to不定詞の部分が、未来を表す「これからタバコをすうこと」、のほうの意味に解釈されます。
したがって、I stopped to smoke.と書くと、「私は、タバコを吸うために立ち止まった。」という意味になります。
一方、「タバコを吸うのをやめた」、つまり「禁煙した」、と言いたい場合には、I stopped smoking.と表すことになります。
動名詞smokingには、「これからタバコを吸うこと」という意味はなく、「タバコを吸うという行為」という意味や、…ingは、to不定詞に比較して、「もう行ったこと」のように、過去を表すような場合もあります。
したがって、I stopped smoking.というのは、「私はタバコをやめた」という意味になります。
そのような訳で、「~をやめる」や「~をやめた」と表したいときには、to不定詞は使えない、動名詞しか使えない、ということを、セミナーで、お伝えしました。
なぜなら、「まだ開始していない未来のこと(to smoke)」を、やめることは、出来ないためです。
これに比較して、startですと、I started smoking.もI started to smoke.もいずれの表現も可能で、いずれも、「タバコを吸い始めた」の意味になります。
smokingを使って、「タバコを吸うという行為」を開始した、ともいえますし、一方で、to smokeを使って、「これから行う未来のことであるタバコを吸うといこと」をはじめる、とも表現できるためです。
中学時代に、「意味が変わるんですよ~」「そのような動詞もあるから、注意して、覚えておいてください」、と中学校の先生が生徒に伝えた表現でした。
I stopped smoking. = タバコをやめた。
I stopped to smoke.= タバコを吸うために立ち止まった。
この、「正反対の行為」を、「覚えておくように」、と中学英語では教えられることがありましたが、「to不定詞は未来を表すから、stopという動詞との関係で、この両者は意味が変わる」、という説明は、あまりなされないようです。
したがって、to不定詞が未来を表す、ということを理解しておけば、色々な英語表現の、細かいニュアンスが分かったり、慣用表現となっているものの理由が分かったり、すると思います。
動詞を見ればすべてが分かる訳ではないですが、ある程度の理由付けや予測は、可能と思われます。
更なる例です。
I want
I expect
などは、「これから起こる未来のこと」を「欲したり(want)」、「期待したり(expect)」するため、to不定詞が後ろに来ます。
一方、consider, finish, avoidなどは、「これから起こること」ではなく、「既に起こっていること」や「事実として存在すること」を「考慮したり」「終えたり」「避けたり」するため、to不定詞ではなく、動名詞が後ろに来ます。
2009年に拙著『技術系英文ライティング教本』を書いたとき、to不定詞の項目で、このこと、つまり「動詞の意味を考えれば、to不定詞をとるか動名詞をとるかがある程度予測できること」までを入れたかったのですが、都合で、入れることができませんでした。
技術英語基礎セミナーでは、拙著『技術系英文ライティング教本』に入りきらなかった内容についても、折に触れて、ご提供していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。