ユー・イングリッシュ代表取締役 中山 裕木子のブログ


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  日常, 翻訳 

目指すのは働く形態?それとも働く中身?:フリーランスになりたい人へ

「フリーランスで働くことを目指す」という人は、多くいるのでしょうか。

 

先日、ある方から耳にした、このような「当たり前の夢」(?)に対しても、私は少し、違和感を、感じてしまうように、なりました。

 

一般的にありがちなこのような話にさえ、違和感がある私は、少し、感覚がおかしいのかな?と思いながら、自分の感じた「違和感」について、そのときはその方に上手く説明できなかったのですけれど、今、分析してみました。

 

「フリーランス」って、目指すものなのでしょうか?

 

なぜかというと、フリーランスは、「働く形態」であって、働く「中身」ではないからです。

 

「働き方」を目指して、仕事を選ぶの?「働き方」で絞って、仕事を決めるの?

 

では、フリーランスの利点は何?

彼ら・彼女らをそんなに惹きつける、利点は、何?

 

私のフリーランス時代10年は、それはそれは、「結構な」ものでした。

 

あの10年に戻ることはもう考えられないくらい、結構な、イバラの道(?)でした。

 

ひとたび、「一日に1万ワード訳す翻訳者」、などと誰かに言われたことがあるようですが、毎日1万ワード訳していたわけでは、ありません。

 

なお、さかのぼって特許事務所時代は、完全に素でタイプする手作業翻訳で、新規案件をもらったら、他の仕事(中間処理の英訳など)を組み合わせても、その日にだいたい6000ワードくらい、打っていました。(置換屋さんならぬ、タイプ屋さん、ですね。おかげでタイプは早くなりましたけれど・・・。)

 

でもそれで1日1万ワード訳す?、となるかというと、そうとも言えないと思います。

 

では、なぜ1日1万ワード?、と言われるようになったのか(もう今は言われないですが、過去にはたまに、知らない人に聞かれて、戸惑っていました。)、私自身も不思議に思っていましたが、あるセミナーで触れたフリーランス初期の話から、そういう噂が、立ったのかもしれません。

 

フリーランス2件目にいただいた仕事が、納期2日で、1万ワード超え、でした。

2日間の納期だというのに、「前倒し納品」にこだわった私は、とにかく納期の日の朝にならない、夜中のうちに納品したことを、記憶しています。

 

そんなフリーランスの、スタートでした。

「厳しい世界だなあ」、と思いましたが、品質を守るべく、体を張って(?)、頑張りました。

 

(なお、3件目からは、それほどひどい納期は、一度もありませんでした。そして、その数年後にお客様と話した時、そのときは納期間違いで、普通に納期を守って納品されたので驚いた、との、笑い話でした。でももしかすると、そんな2件目があったから、その後の数年、途切れることなく、継続してご依頼くださったのかもしれません。ラッキーでした(笑))

 

さて、そんなフリーランス初期の時代は、基本的に、納期1週間程度のお仕事ばかり、受けていました。1件を納品すると、たいていその納品日に次の1件をくださるので、お休みは、ありませんでした。

 

したがって、なんとか休みを捻出するために、例えば納期に対して、数日早めに仕上げて、翻訳原稿をそのまま1,2日寝かして納品、という変な手法まで、常套的に、使うようになっていました。

 

なお、「納期前」に納品しますので、翻訳原稿を2日寝かしても、少なくとも1,2日は、前倒しで、納品していました。

 

そんなわけで、1件ごとに、必死で集中していましたので、1件ごとに、「口内炎」が1つ、出来ていました。(変な話ですみませんが、これ、本当です。)

 

なお、このとき、「口内炎」とは、「すごい力(負荷)」が体にかかったとき(それをストレス、と呼ぶ人もいると思うのですが、私自身は、それを楽しんでいましたので、ストレス、とは思っていませんでした。ただただ「すごい力」と描写したい)、突発的に皮膚が変化し、出来るものだ、ということを、自分で実験しながら(?)、確信していました。

 

さてさて、そんな「フリーランス」時代を乗り越えられたのは、私自身は、「フリーランス」、を目指していたわけでは、なかったためです。

 

「フリーランス」という仕事形態自体を目指していたとしたら、そんなに苦しい毎日に、耐えられたとは、思いにくいのです。

なお、当時は「苦しい」と思ったことは一度もなく、ただただ、没頭していました。

 

私にとって、フリーランスは「必然」であっただけであって、「目指していた」ものでは、ありませんでした。

 

「必然」が私を後押しし、フリーランスになる、といった働き方が、決まってきました。

 

特許事務所に入ってからの、簡単な私の軌跡:

→特許事務所に入った。

→自分の思う仕事をしようと思うと、事務所では限界を感じるようになった。

→自分の考えるところの良い翻訳をしたかったのでフリーになった。

→フリーランスでは良いお客様に恵まれ、互いに学び、歩ませていただいた。

→フリーランスでのお客様も移り変わり、フリーという働き方に限界を感じるようになった。

→法人化した。

 

そんなわけで、仕事の「中身」を追求していると、それにフィットする形で、「働き方」、が後からついてきました。

 

このことが、今回私が、「フリーランスを目指す」、というところに感じてしまった、違和感なのだと、思います。

 

 

ねえ、特許翻訳学習中の皆さん、「フリーランスを目指す」、なんて言わないで、「良い英文明細書を日本の企業様に届けるために尽力する」、という想いを持って、特許翻訳を、始めませんか?

 

だって、「フリーランス」は、ゴールではないのですから。

 

私の価値観を強要するつもりは、ありません。皆それぞれの価値観がありますし、「仕事は仕事」、「人生の楽しみは他にある」、という考えも、大いにあると思います。

 

でも、「仕事」は日々の時間の大半を埋めることは、事実です。それが「人生の楽しみ」とオーバーラップすれば、毎日の楽しさが大きく変わり、そして仕事自体も、大きく変わっていくと思うのです。

 

さてさて、ユー・イングリッシュの翻訳に関わってくださる皆さま、「フリーランスとして独立することを目指す」や「今は我慢して修行、スキルアップを目指す」、とか「~が出来るようになることを目指す」、といった、ご自分目線な夢を超えて、もっともっと、壮大な「目的」を持って、そしてもっともっと、壮大な「テーマ」を私と一緒に実現することを願って、一緒に、仕事をしませんか。

 

そんなことにご協力くださる方は、是非、ご縁をくださると嬉しいなあ、と思っています。

 

(このような考え、暑苦しい・・・?)

(なお、もちろん結果的に「フリーランスとして独立される」時がきたら、まぶしい背中を送り出すのには、私は講師業を通じて慣れていますので、大丈夫です。)